レンカ、狩りをする







それまで森の奥に入っていった兵士たちが逃げ帰ってくる。かなり慌て出して、テントのところにまでくると角笛を鳴らした。

「モンスターが出たぞ!フレアリオーンだ!」

すぐに討伐の兵たちが馬首をめぐらすが、それを静止させてユリシャが白馬に鞭をいれた。

「ひけ!私がいく」

「しかし陛下!」

兵士たちは全員テントのほうに集合した。皇后と皇太子、そして寵姫を守らなければならない。
ニアも剣を引き抜いて、茶色の馬でユリシャの後を追い出した。

「ユリシャ、フレアリオーンはここら辺りには生息していないはずだぞ!」

「出たのならば仕方あるまい。あれは危険だ」

「俺もいく!」

黒馬を走らせてユリシャたちに追いついたレンカは、ユリシャに止められた。

「お前は危ない。兵たちとテントにいなさい」

「やなこった!!!」

「だそうだぞ、お姫さまはわんぱくだなぁ」

ニアは茶色の馬に鞭をいれた。開けた草原が消えて、森の中に入る。小鳥の声さえ聞こえなかった。
柔らかい木漏れ日が馬の上の三人にまで降り注ぐ。
動物の気配もしない。静か過ぎる。

「フレアリオーンって?」

「キメラの一種だ」

「空飛ぶ?」

「無論飛ぶ」

ユリシャは厳しい顔をしていた。
フレアリオーンは元々、北方地帯のモンスターで、ここより遥か北の氷河地帯に生息している。人間と接触することも、無論稀だ。北方民族の狩猟民族が、稀に遭遇して襲われたりして、モンスターハンターの人間が雇われ、グループで討伐にいったりする。

「へ〜。って、複数だぞ、おい」

遠目でも分かる巨体。ドラゴンの体にペガサスの翼、顔は人間。足は猪ときた。この世界だけのモンスターらしい。

「我が剣は神剣レイシャ」

ユリシャが剣を引き抜いた。それは眩しく光を放ち、そのまま襲ってくるフレアリオーンを真っ二つに切り裂いた。

「俺のはただの剣!」

いちいち、剣の名前いう必要ないと思うんだが。
ニアはぶんぶん剣をふりまわして、でも襲いかかってくるフレアリオーンの翼を、見事に的確に切り裂いた。血が大地に染み渡り、微かな腐臭がした。

「俺のは聖剣シルエド・・・・ってあああ、レイピアになってる!!」

ガビーン。
そういえば、シルエドはおいてきたんだった。
寵姫が腰に帯びる剣は正式な場面ではレイピア。今度から無視して、シルエド装備してこよう。

キンカキン!
ユリシャがモンスターの爪と切り結びあっている。そこに、人間の顔が口ひらけ、炎のブレスを浴びせた。

「聖盾(ホーリーシールド)」

すぐにユリシャは魔法で結界を張った。

「いっけええ!」

ニアは茶色の馬から跳躍すると、空を飛ぶ一匹のフレアリオーンの上に着地して、その頭と胴を切り離す。
二人とも、素早い上に強い。次々と襲いかかってくるモンスターを返り討ちにしている。
でも、相手は空を飛ぶ。こちらは空を飛べない分、幾分不利。
 



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