レンカ、髪を切ってみる。







次の日も、次の日もレンカは宮殿のユリシャの寝室に泊まった。

後宮に戻ると、すれ違う姫たちの視線はさらに冷たいものになっていた。ま、関係ないけどと、レンカは私室に戻ると長くなってきた髪をうざそうにかき上げる。

サーラにきてもう3ヶ月が経とうとしている。変わらずもとの世界には戻れそうにないし、毎日結われる髪を短くしたくて仕方ないレンカ。でも、このまえ思い切って剣で短く切ったらユリシャに怒られて、魔法で髪を伸ばされてしまった。前より長く。

「ユリシャ、髪きれる?」

「切れるが、美容師を呼んだほうが」

「お前でいいわ。めんどいしー」

私室に毎日のように訪れるユリシャにハサミを持たせると、そのまま髪をきってもらった。

腰よりも長くなった髪。シャギーを入れるように、綺麗にユリシャがすいていってくれた。
髪が伸びた分、オレンジのメッシュの部分は白くなっていないのだろうかと思ったけど、ユリシャは根元までオレンジだという。

どうやら、メッシュの部分はその部分だけオレンジの髪らしい。

「こんなものだろう」

「ああ、あんがと」

少しだけ髪が軽くなった。でも、やっぱりユリシャはレンカの髪は長いほうが好きらしい。

「皇后、そろそろ許してやったら?」

もう、あれから半月経っている。まだ皇后は牢屋の中だ。

「そうだな」

レンカの言葉で、皇后はやっと不衛生な環境から解き放たれ、自由になった。でも、皇后はますますレンカを怨むようになっていた。

「殺してやる・・・」

皇后はそう口にしていたという。
ユリシャが皇后を寝室に呼ぶことは全くなくなった。それどころか、公式の場でもレンカを着飾らせて連れまわる。皇太子ユリナールを伴って。

貴族の中には、皇后の地位をレンカに奪われたと悪口するものまで出てくる始末。とにかく、カレナ皇后は、ユリシャの心を取り戻そうとあれこれ画策するが、どれも効果なし。

唯一、レンカに美しい和服の衣服をプレゼントしたときだけ、不本意なのに、ユリシャは喜んで、カレナ皇后を褒めてくれた。

「あー。和服が落ち着く」

パタパタと団扇を仰ぎながら、レンカは宮廷に入ると、いつものように兵士たちと混じって剣の練習をする。それから、ユリシャと一緒に歴史の勉強。その後は自由行動だが、大抵ユリシャかニアが側にいた。

「どうだ、レンカ。サーラの世界にはもうなれたか。寵姫にも」

「あー慣れた。ユリシャの相手一度してみる?次の日腰痛くて起きれないぜ」

ニアと、宮殿の中庭で話し込んでいた。
立ち話もなんだからと、ベンチに誘われてそこに座り込む。

「後宮に戻るわ」

「送っていこうか?」

「や、平気」

レンカの右目は、眼帯をしたままだ。その眼帯にニアの手が触れる。

「これ、外さないのか?」

「ああ。視力戻らないんだ。右目真紅だし、オッドアイでなんか不気味だろ?」

「そうかな?ユリシャはなんといっていた?」

「すっごい綺麗だって」

「だろうな。ちょっと外してみろよ」

「いいぜ」

ユリシャは複雑な眼帯を外す。右目が真紅、左目は銀色のオッドアイ。不思議な色合いだったが、神秘的にしか見えなかった。

「綺麗だな。ま、眼帯しとけ。真紅の瞳はカッシーニャの証だからな。侍女とかが怖がるだろう」

「おー。じゃあな、ニア!今度一緒にアクションRPGしようぜ!」

「おう!」
 




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