後宮に戻ると、寵姫クローディア姫付きの侍女がきていた。なんでも、寵姫だけの宴を開くらしい。そこにユリシャはこない。 どうしようか迷ったけれど、レンカはいくといった。 「ようこそ、レンカ」 「あー。うっす」 和服をきたレンカは、美しく着飾った寵姫たちの宴に呼ばれ、そこでなんともいえない挨拶を放つ。 クスクスと、他の姫たちが笑う。 レンカの下品さがおかしいらしい。 レンカは、本来なら寵姫として一番宴の中心の席に座るのだが、一番端っこに座れといわれてその通りにした。クローディアとイヴァルは、弦楽器を手に美しい音色を奏でている。サリア姫はフルートを。そして、胡弓のような弦楽器を渡されて、レンカは困った顔をした。 「寵姫なら、音楽ができて当たり前よ?それとも、あなたはできないのかしら?」 「やってみる」 ギギギギギィ〜〜。凄い音がして、その場にいたみんなに嘲笑された。レンカも笑っている。 「すっげー音!才能ねー!!」 サリア姫が、レンカにぶどう酒を勧めた。 「あ?ありがと・・・」 すでに大分酔っているレンカは、サリア姫の優しさにちょっと感動した。他の寵姫の中で、サリアは気が弱く、いつもはクローディアとイヴァルに従っているが、レンカには少しだけ優しい。 嫌がらせとかしないし。 レンカは、ワインだと思って飲んだそれは、アルコール度の高い酒だった。 「な・・・っ、あ」 世界が回る。おまけに、体に力が入らない。 かくりと、レンカはグラスを落とした。凄まじい眠気に意識が朦朧とするけれど、意識を失うわけにはいかない。何をされるか分かったものではない。 「運んで頂戴。クローディアの部屋でいいわ」 クローディアが、侍女たちに意識を失いかけているレンカを運ばせる。 「さぁ、姦通罪であなたは後宮を追われるのよ。きて」 部屋に入ってきたのは、後宮に普段入ることのできない下級貴族であった。レンカ姫を抱けるとイヴァルに吹聴されて、欲望漲らせて、後宮に侵入したのだ。 「さぁ、レンカよ。好きにしてちょうだい」 「レンカ姫――なんという美しさだ。ああ、肌がスベスベだ。夢のようだ」 「な、に――?ユリシャ?」 「そう、わたしはユリシャだよ、レンカ」 イヴァルはレンカの姿など見たくないが、姦通のシーンを目に焼き付けるために、クローディアと一緒に貴族の男にレンカが抱かれていく様を見ていた。 「んん、あっ、あっ・・・・」 その声は、クローディアやイヴァルよりも艶やかだった。 ベッドの上で乱れるレンカは、どの寵姫よりも美しかった。 「レンカ姫――」 「や、だぁっ!お前、ユリシャじゃない!」 レンカは涙を零して拒絶するけど、体に力が入らない。逃げることもできない。アルコールだけでなく、媚薬と睡眠薬が入っていた。 朦朧とした意識の下で、ユリシャの姿を探すレンカは、貴族の男に捕らえられた。 「やっ」 「あなたと、やっと一つになれる」 すでに透明な蜜を吐いてしまった。体中が熱い。このまま貫かれたら楽になるだろうけど、名も知らぬ男に抱かれるほど安い存在じゃないと思っても、もう体が熱くて何も考えられなかった。 「んう」 唇を奪われて、レンカは苦しい喘ぎ声をもらす。 「ユリ、シャ――」 姦通罪は、身分を剥奪までいく重罪だ。 NEXT |