レンカ、寵妃になる







ユリシャは、後宮でのレンカへのイジメをなくすために、他の寵姫、イヴァルやクローディア、サリアも含めて他の姫君たちの部屋を渡るようになっていた。
別に、レンカはきにしていないけど、ちょっと複雑な気分だった。

愛しているといわれたのに、相手は他の相手に浮気する。これが浮気なのかどうかは分からないが、皇帝であり後宮を持つ限り、そうしないと国内の政治にも関わるのだ。

「は〜」

暇つぶしにゲームをするが、今一楽しくない。
サリアの部屋にでも遊びにいこうか。そう迷っているうちに、サリアが遊びにやってきた。

ユリシャが後宮の他の姫と夜を過ごすようになって、レンカに対する嫌がらせはぱったりとやんだ。
サリアはユリシャの子供を宿したらしい。
妊娠はすぐに分かる、この世界では。

やっぱり、なんともいえない気分。どんなに愛されても、愛の結晶なんてレンカにはうまれない。

サリアは、子供を産みたくないのだといって泣き出した。

「サリア?どうしたんだよ」

「陛下の子供を産むと――寵姫から寵妃になるの。そうしたら、きっと皇后様に殺される!」

わっと泣くサリアを落ち着かせようと思ったけれど、抱き締めるしか方法が思い浮かばなかった。
そして、数日のうちにサリアは寵姫から寵妃となった。なんと、レンカも一緒に。

「どういうことですの!!」

寵姫のままのイヴァルとクローディアは激怒した。
皇帝に詰め寄っても、寵妃にしたいからしただけだといわれた。

「あの二人!今に見てなさい!!」

クローディアとイヴァルは、また牛糞をレンカの部屋に巻いて、そして巻き返されるというまるでいたちごっこのようなことを続けていた。
でも、レンカももう慣れてきたので、大抵の嫌がらせは放置している。

でも、サリアは慣れていない温室育ちのせいか、いつもレンカのところに泣きにくる。そのサリアを庇い、サリアの分までレンカは二人に仕返しした。

それはある日のこと。
公式の行事である、イヴァル姫の誕生祭であった。ユリシャの寵愛も取り戻したと有頂天のイヴァルは、クローディアと一緒に洗礼を受けていた。
クローディアとは義姉妹の契りを交わしていたので、誕生祭などがあれば一緒に祝うことになっている。

たくさんの貴族や皇族、王族が押しかけた中で、法王の洗礼を受け、美しく着飾ったイヴァルとクローディアは、ユリシャに口付けられて、見たかとばかりに控えていたレンカに目配せをする。

「イヴァル、並びにクローディアを、今日をもってして寵妃とする」

身分違いになってもやり返す二人の姫のためを思っての処置であった。寵妃は、皇妃につぐ、寵姫の身分としては2番目に高いものとなる。
後宮に入った姫は、愛姫からはじまり、身分は皇愛、寵姫、寵妃、皇妃とあがっていく仕組みになっている。一般的に皇帝の寵愛を受けた姫も寵姫と言われるが、寵姫は身分の一つでもある。現在は寵姫しかいないため、皇后に継ぐ身分とされている。

まさに幸せ絶好調のシーン。

に、レンカは嫌がらせの仕返しを、サリアの分をかますことにした。
シルフを召還すると、牛糞を二人の頭の上にのせてやった。法王の前で、頭のうえにほやほやの牛糞を乗せて、二人はそれに気づかず貴族たちに手を振っていた。

貴族も皇族も王族も、みんな吹き出した。

「牛糞寵妃だーーー!!」

それは、リトリア帝国に残る寵姫の誕生祭であった。


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