レンカ、今日もバトル







「イヴァル姫より、東方の珍味を取り寄せたとのことで、レンカ様へと」

「へ〜」

侍女と一緒にやってきたイヴァル姫は、身分が寵妃になったのか、最近特にご機嫌であった。
東方の珍味というが、何かもちのようなものだった。多分、草餅とかああいう類のものだろうとレンカは見て判断した。
イヴァル姫は、今日も美しい。化粧も完璧だし、絹で作られた東方の衣装というのが気に入ったらしく、薄くひらひらしたドレスを身に纏っていた。
和服の、着物を少し形をかえたような。何枚も重ね着しているところを見ると、どうも平安時代の貴族の姫君が着る衣装に近いように見えた。

「ありがとう。とりあえず、イヴァル姫。俺だけってのもなんだから、お茶していかないか?」

「あら、いいですわね。クローディアとサリアも呼びましょう」

こうして、レンカの部屋の庭先で、4人の寵姫はお茶をすることになった。

レンカの部屋に限らず、寵姫たちの部屋はホテルのスティートルームのようになっていて、複数の部屋が繋がっている。中でもイヴァル姫の部屋は一番広く、それがイヴァル姫にとっては自慢でもあった。
レンカが来る前、皇帝ユリシャの寵愛を最も受けていたのはイヴァル姫である。
今更部屋を変えろなどと、ユリシュはいうような人物ではない。

寵姫でない他の姫も、広い部屋を与えられている。後宮は宮殿よりも大きく広い。せいぜい二階建てで、皇帝が足を運んでのそのまま姫君たちの部屋にすぐに入れる設計になってる。
宮殿は兵士たちの寝泊りの部屋や、牢屋もあるので、上に長い、6階建てくらいだ。

レンカは奥の部屋や、上の部屋は使っていない。上の部屋は侍女に与えている。一番庭に面した部屋を寝室としている。普通は、寝室は皇帝との夜伽のことを考えて奥の部屋になるのだが、そんなことレンカは考えていないしどうでもいい。

レンカの部屋に面する中庭も、それなりに意匠を凝らした作りになっているが、他の姫君たちはたくさんの花を植えているのに対して、レンカが植えているのは薬草だ。ユリシャから知識をもらい、レンカは薬草学の道を歩みたいと思っていた。
まぁ、だから殺風景ともいえる。
普通の中庭は四季折々の花で溢れているし、噴水もあるけど、レンカの中庭には噴水はあるけれど、水は流していない。

「レンカ姫の中庭は、汚いですわね」

まず直球でクローディア姫が投げた。

「ああ、俺薬草を育てているから。ユリシャから種を貰ったのを育てているんだ。ユリシャ、よく育てているなって褒めてくれるんだ。よくここでお茶一緒に飲むんだ」

「あら、そうですの?」

イヴァル姫とクローディア姫は頬を引き攣らせた。イヴァル姫とクローディア姫が、侍女に命じて庭師を雇ったりして、個性溢れる美しい中庭にしても、陛下は一度だけ美しい庭だといっただけで、それきり褒めてくれない。
まして一緒に中庭でお茶なんてありえない。

「こ、こ、小汚い庭が陛下には珍しいでしょう」

クローディア姫は高飛車にオーッホホホホホと笑った。

「この前庭で盛られた。何回したっけ?4回くらい?」

「ホホホ・・・・・・ホ・・・」

どんどんと、クローディア姫の高飛車な笑い声が小さくなっていく。
 



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