「親友の存在意義」@







「おはよ〜」
「おっはよ〜」
「はよっす」

2014年5月。

あきらをいじめる存在もいなくなり、あきらはゆっくりと教室のクラスメイトとも溶け込んで、他に会話する夜流や透のようなレベルの友人とまではいかないが、雑談をたまにしたりする知り合いや友人が増えていった。
あきらは楽しそうだった。
父親の存在がなくなり、母親を受け入れたことで、あきらは精神的にも大分楽になった。
その影に夜流とういう親友を得た意味は大きかった。
透もいい友人だ。学校が終われば、哲やアキラといった学校外の友人にも恵まれる環境を手に入れた。

楽しい。

高校生活が、楽しい。
楽しくて仕方ない。

羽を伸ばすあきらは、どこまでも高い空を羽ばたいていく。
夜流は、あきらがそのまま羽ばたいて、帰ってこない気がして、ちょっと心配にもなりはじめていた。
自分以外に親友ができて、自分の座が奪われたりしないだろうか。
そんなことを考えるようにもなっていた。

夜流は、教室の窓際のせきで、5月のよく晴れた蒼い空をぼーっと見上げていた。
「夜流?どうしたの、変な顔して」
隣同士の席になった夜流とあきら。
「あ〜。うん、多分、五月病?」
「はぁ?夜流が?」
あきらが自分の席にすわり、椅子をあきらの席に近づける。
「冗談、顔だけにしろよ」
「何それ!キイイイイ!!!」
夜流は手をシャカシャカ動かすと、あきらの首を絞める。無論軽くだけど。
「ギブギブ!!」
あきらが、ばんばんと机を叩いて笑い声をあげる。
本当に、あきらも性格が明るくなった。

透が、背後からあきらに抱きついて、だれてきた。
「あきら〜〜」
「なんだよ、透!」
「マジ、今月金欠・・・お金かしていただけないでしょうか!」
正面に回りこんで、頭を下げて頼み込んでくる友人に、あきらは透の頭にチョップをかましてから、聞き返す。
「またかよ。いくらだよ」
「バイト!決まったらから。給料はいったから返すから!とりあえず五千円!!」
「あーはいはい」
財布を取り出して、あきらはそれを透に渡した。
「まじ感謝!!」
神様を拝むみたいになんまんだぶとか唱え始める透を無視して、あきらは違う新しい友人になったクラスメイトの雪白学(ユキシロ マナブ)と会話をしだした。
夜流はぼーっと空を見上げている。
「学、また宿題やってこなかったのかよ。仕方ねーな」
「すまん、恩にきります!」
学は、デスマス口調で誰にでも丁寧に話しかける、性格も明るくて社交的ないい友人だった。
最近、あきらはこの学を気に入っている。


あきらは、学をまるで夜流と一緒にいる時のように親しく会話して、無邪気な笑顔を向ける。
夜流には、それが気に食わない。
親友は俺だろう?
そういつも思う。

「夜流、眉間に皺できてるぜ」
「できてるだろーなー」
透の指摘に、夜流はまた空を見上げた。
「見守ってやろうぜ?いいやつじゃん、学」
「あー。いい奴だな・・・・」
「おー、夜流くん、何か悩みごとですか?」
学が、夜流の席の前にやってきた。
「おー。お前のせいだ」
「な、なんと!拙者、心当たりがありません」
「冗談だっての」
けらけらと夜流は笑いだす。
「いやでも、なんか悪い気分にさせてたらごめんです」
「いや・・・」

「ちょー、夜流、学苛めないでよ!!」
学を引き寄せて、夜流を責めるあきら。

「いやー。・・・・・・・ちょっと、俺屋上いってくるわ」
「おい、夜流!」
「夜流殿!?授業はどうするのですか!?」
「うざいから、ふける」

「夜流・・・・」
あきらが、分からないといったように、哀しい目をしていたけど、夜流はそれを無視して授業をエスケープした。




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