レンカの日常







「は〜。疲れた」

剣の稽古を終えて、いつものようにニアの館でバスルームを借りて汗を流した。それから、ユリシャがやってきてニアと一緒にルクレツィアも混じって、ティータイムのはずが、ルクレツィアがユリシャを挑発するものだから、ユリシャとルクレツィアが剣の試合をする羽目になった。

キン、カキンとお互い一歩も引かぬ両者の腕前。
ややルクレツィアが有利かと思われたが、ユリシャは背に白い翼を出す飛翔の魔法を使い、空を翔けて上からルクレツィアに切りかかった。
ルクレツィアも星のドラゴン。一筋縄ではいかない。
その剣をやすやすと地上で受け止めたが、ルクレツィアが持っていた剣が、ユリシャの持っていた神剣レイシャに耐えれなかった。

ボロボロと灰のようになっていく自分の剣を前に、ルクレツィアは「負けた」と初めて剣で負けを認めた。

「流石はリトリアの皇帝だ」

ルクレツィアは褐色の肌に映える金色の髪を太陽に翻しながら、ユリシャの手をとった。
ユリシャも幾分和んだ表情だった。

「この剣でなければ、俺が負けていただろう」

と普通の剣と神剣という差を認めた。
お互いの力量を認め合ったあとは、打ち解けあったように魔法や歴史、剣などや政治について長々とニアを交えて語り出す。
まだルクレツィアを完全に認めたわけでなはないユリシャであったが、星のドラゴンとしてレンカに付き従っているし、王とレンカのことを呼び、イヴァルの嫌がらせをやり返したりしているようで、他の寵姫とも上手くいっているようだと思った。

嫌がらせをされたらやり返す。
それがレンカだ。それはユリシャも黙して受け入れている。暗殺者を放ったりするよりは、よほど喧嘩のように嫌がらせをして、仕返したりしているほうがまだ仲がいいほうだ。

もっとも、暗殺者など雇っても、レンカにはドラゴンたちがついている。
そうそうレンカがやられるはずはないが、以前のように酒に酔わされて他の男に汚されそうになる可能性も否定できない。
姦通罪は身分を剥奪する重罪。それはレンカとて免れられないことだ。

無理強いであろうと、姦通罪が一度成り立てば、レンカは後宮にいられなくなるし、ユリシャもレンカを手放すか、寵姫ではなく身分を剥奪された者として扱うしかない。

レンカに今までのような宮殿での自由も許されなくなる。
それだけは避けたいことであった。

「だっりー。ユリシャ、茶いれてくれ」

「くく・・・・政治の話はお子様には難しかったかな?」

蒼銀の髪を風に揺らして、レンカの部屋の中庭でニアもルクレツィアもいなくなった二人は、やっとお茶の時間に突入していた。
とにかく、政治とかレンカは興味がない。ユリシャは皇帝であり、統治者であるのだから、古き星のドラゴンの考え方などは斬新だったようで、いつもより長く話し込んでしまった。
その間レンカは放置だ。

レンカといえば、ユリシャからもらった薬草に如雨露で水をあげていたり、ゲームをしたり暇つぶしをしていた。

「疲れた後は〜、ウーロン茶がきく」

「緑茶は?」

「うーんあれは渋いからなぁ。紅茶も甘くていいんだけど、間食とりたくなるから」

お茶だけを冷やされた、氷の入れられたグラスに注いで2杯ほど飲み干して、レンカは蒼い空を見上げた。



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