レンカ、消え行く







「滅びよおおおお!!!!」
「お前が滅べええええ!!」
カシウスとレンカは互いに力をぶつけあう。
カシウスは、フェンリルの体をほとんど霧散させながらも、レンカに噛み付きその四肢を食らった。

「レンカーー!!」
ユリシャには、ただ叫び見ていることしかできなかった。
「くそおお!」
拳で大地を殴る。

ドサリと、手足をなくしたレンカが空から降ってきた。凄まじい出血量だ。
「レンカ!!」
癒しの呪文をかけるが、間に合わない。
致命的な傷だ。

「滅びよ・・・・・我は人である。カッシーニャはもう意識体だけの存在。我は闇である。我は星である。滅びよ。太陽はカッシーニャのみ。カシウス=カッシーニャなど、太陽の精霊ドラゴンになりえぬ」

普段のレンカとは違う口調。
真紅の瞳はやがて静かに燃えて、銀色に変わった。
そして、このサーラの世界から、レンカが崩れて灰になっていく。

「レンカ!!!」
ユリシャは涙を零して灰になっていくレンカをこの世界にとどめようとするが、サラサラと手のひらから灰は零れ落ちていく。

「あああああああああ、があああああああああ」
蒼銀の光を満たして、フェンリルが光の粒となっていく。
「人間如きに・・・・ああああああ!!!!」
断末魔の悲鳴。

霧散していくカシウス=カッシーニャ。そして、同じように消えていくレンカ。

「レンカあああああ!!」
ユリシャの叫びは、ちゃんとレンカに届いた。
「よお。泣くなよ・・・・・俺、ちゃんと戻れた。レンカに戻れた。闇のラグドエルに飲み込まれなかった。星のルクレツィアにも・・・・なぁ、泣くなよ」
レンカが泣いていた。
レンカは穏かな顔で目を閉じる。
その体が全て灰になってしまったとき、レンカの体から星のルクレツィアをはじめ、全ての精霊ドラゴンたちがはじき出されて、消え行く自分の主を見守った。

「王・・・・」
「契約者よ・・・」
「白きメシア・・・・」

たくさんの精霊ドラゴンに見守られて、レンカは白い灰になって消え去った。

「レンカ・・・・・」

星のルクレツィアは、人型に戻ると泣きつづけるユリシャの傍らに、剣の姿に戻った光のレイシャの神剣を置くと、真っ黒な12枚の翼を広げるとユリシャに静かに語りかけた。

「お前のお陰で、王は闇に飲まれることなく散った」
「くそおお!!」
灰を両手で握り締めて涙を零すユリシャを、12枚の翼でゆっくりと抱擁する。

「泣くな、人間の皇帝よ。レンカは・・・・・レンカは元の世界に戻されただけだ」
「元の世界に?」
「そう。地球という、サーラとは別の異世界に戻っただけだよ」

「それでも、私はレンカがいなければ!」
「なら、頼めばいい。あの黒猫に」


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