「ナイトとセカンドキス」@







「ん・・・・」
「起きた?」
「夜流・・・・」

あきらが目覚めると、そこは保健室だった。すぐ側に、夜流の顔があって、あきらは吃驚した。
暖かい人の温もりに、でもあきらは縋りつく。
「夜流・・・・あったかい・・・・」
「お前冷たいな・・・体温、ちょっと低い?」
「うん・・・・生まれつき」
「そっか・・・・」

夜流は安堵する。そして、起き上がる。ベッドを出て、あきらの頭を何度も撫でた。
「もうちょっと寝とく?先生には、早退届けもう出しといたけど。俺も早退届けだしといた。一緒に帰る?」
「ん・・・・うん・・・・・・でも」
「でも?」
「もう少し、夜流、ベッドに入って?」
「どうした?」
「もう少し、夜流の体温、感じていたいよ・・・・」
「うん、分かった」

保健室のせまいベッドに、少年二人は寝そべって、体温を共有しあう。
「あきら・・・・ごめんな。今まで」
「ううん。俺のほうこそ、ごめん」
二人は顔を見合わせあって、お互いクスリと笑って、コツンと額をぶつけあった。
「あきら、ちゃんと食べてるか?お前軽すぎ。体重いくつだよ」
「ん・・・この前はかったときで・・・42・・・」
「うっは・・・それやべぇ。もっと食えよ」
「あんまり、食べられないっていうか・・・一時期、食事ぬかれてたこと、あるから・・・・」
「そっか」
あきらは、虐待を受けていた。食事を抜かれることだって、あっただろう。

「あきら、もう大丈夫?怖くない?」
「ん。怖いけど、夜流がいるから平気」
「俺が守るよ。あきら。俺、お前のナイトな」
「は・・・なんだよそれ。だっせ・・・俺、お姫様かよ」
「いや、王子様でいいじゃないのか」
「王子様のナイトねぇ・・・・」
二人で、保健室の天井を見上げる。
それから数分して、完全に落ち着いたあきらと一緒に、帰ることになった。
あきらと夜流は電車通学だ。透は自転車通学。

**********************************

「あ、コンビニよって帰る」
「おう。俺、コンビニの前で待ってるから」
あきらが、最寄の駅のコンビニによってはいる。
夜流は、あきらが出てくるのを待っていたけど、あきらはすぐに出てきた。
「ちょっと・・・・あのいつもの噴水の前、いこうか」
「ん?どうした?」
「いこ!」
あきらに手をひっぱられて、夜流は走り出す。

噴水の前にくると、人はまだまばらだった。時計をみると、午後3時。
もうすぐすれば、帰宅する人間で込み合うだろう。

「なぁ、あきら暑くねーの。コートなんかきて。もう5月だぜ?」
「ああ、これ。んー暑いけど、ロッカールームからだしてきた」
「なんで?」
「これきてたら、俺、女の子に見えるだろ?ブレザーの制服も隠れるし」
「まぁ。どう見ても女の子だな。しかも究極の美少女!」
「しかもは余計だっつの!」
あきらが、夜流の頭をはたく。
完全に元気を取り戻したみたいで、夜流はほっとした。

いつもの噴水の前にくる。
はじめてあきらと夜流が会った場所。そのベンチにあきらは座ると、コンビニの袋からバナナジュースを取り出して、夜流に渡す。
「これ、あげる。夜流、好きだろ?」
「あー。好きだけど・・・・お前、飲めよ」
「なんで?いらない」
「いいから飲めって」
「もったいないから、飲む」
あきらが、ストローをさして、バナナジュースを飲む。
「おいしい」
「うん。俺、それ好きだから」
「なんで飲まないの?」
「こうする、ため」

ベンチに座ったあきらの顔に、影がふってきた。

「よ・・・・・ん」

目の前にふってきた夜流の整った少年らしい顔と、太陽に透けた金髪に、あきらは、目を閉じた。

「ふ・・・・・んん」

ちょっと息苦しい。

「んー・・・・」

長い。1秒、2秒、3秒・・・・。
「ん・・・んっ」
10秒くらいして、やっと夜流の唇が離れた。
唇が触れるだけの優しいキスかと思ってたけど、舌が絡んだ。
「甘い・・・・バナナジュースの味する」
「ばっかやろ!お前、人前でキスなんてするなよ!!」
「目閉じたの、お前じゃんか」
「だって・・・・・目の前に顔あったら、閉じるしか、もうないだろ」
「これが透だったら?」
「もち、顔避ける」

「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」

「俺のセカンドキスもヤロー相手・・・・夜流だし」
ぼーっと空を見上げるあきら。ショックはないようだ。
「お前、俺のこと」
あきらは、言葉を飲み込んだ。

俺のこと、好きなの?

そう言おうとして。





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