「中間テスト」A








夜流とあきらは、毎日同じ電車で通学し、毎日一緒に帰る。
そこにたまに、雨の日だけ電車通学の透が混じる。晴れの日は、透は電車代をけちって、自転車通学をしている。
自転車でいけない距離ではない。
元々同じ市内に住んでいるのだから、夜流もあきらも自転車通学でもいいのだが、天気の問題もあったりするし、朝から長距離を自転車でこぐなんてだるいので、電車通学だった。

中間テスト初日の朝も、夜流とあきらは同じ時間帯の電車の同じ車両で通学していた。

「ん・・・・」

満員電車の中、教科書を開いて勉強していたのだけど、あきらが頬を紅くして夜流のほうに擦り寄ってくる。
夜流は、初日にある数学のことが頭いっぱいで、それに気づかない。
「やっ・・・ん」
めちゃくちゃ艶のある女の子のような声が夜流の耳元でして、夜流はあきらの異変にきづいた。
あきらはもぞもぞしている。
「ヨ・・・ル・・・・」
泣きそうな顔で、夜流を見上げる。
「・・・・・・・ッ、ッ・・・・」
あきらの背後で、中年のおっさんが、あきらの下肢に足をわりこませ、あきらの臀部や尻を触っていた。
中年のおっさんの手が、後ろから伸びてきて、抵抗しないあきらのブレザーをはいあがり、あきらの薄い胸をまさぐりだす。
「・・・・・・・・・・や」
あきらは、今にも泣きそうだった。

「はい、そこまでね」
「ちょ、何するんだよ!」

「こっちの台詞だ、この変態痴漢野郎!!」


夜流の大声で、中年のおっさんはビクビクしながら、シラをきりはじめる。
「な、何を言っているのかね君、こ、この子は男じゃないか!どうして私が痴漢する必要があるんだ!!」

「はいはい。そういうことは、機動警察のとこでいいましょうね」

すぐ、次の駅であきらをおろし、おっさんの手を掴むと、そのまま有無をいわせぬ勢いで駅員に引き渡した。

「大丈夫か、あきら?」
「う・・・ん・・・」
あきらはもぞもぞしていた。
「どうした?やばい?トイレいく?」
男だって、生理的に不快でも、あそこを触られてたりしたらたつもんだ。仕方ない。そんな風にできてるんだから。
「一緒についてく?待ってるぞ?」
あきらが男の痴漢に会うのは通算これで4回目。
5月の半ばで4回とは、やはり見た目が美少女すぎなせいだろうか。最初はみんな勘違いして触って、最後まで女の子と思ってそのまま駅員に引き渡され、少年であると知ってそこでびっくりする。
今回は、あきらが男だって知ってて触ってた。だったら、やばくなっても仕方ない。

「夜流も来て!」
「へ?えええ!?」

男子トイレの前まできた夜流の手をひっぱって、あきらは無理やり夜流を連れてせまい個室に入った。
「あきら?大丈夫?」
「ん・・・・。俺・・・・」
「どうした?」
「俺、自分で・・・・その・・・」
「あ?」
「自慰とか・・・したことない、から」

「ほええええ!?」
「しー!!」

幸いにも、他に男子トイレの利用者はいなかった。
「俺なんて、自慢だけどけっこうしまくりだぞ!」
「自慢になんねー」
あきらはもぞもぞしている。

「やり方、わかんないの?」
あきらは、こくんと真っ赤になって頷いた。




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