2014夏「連休と黒い影」A








夜流が宛ての封筒には、写真が2枚と、1枚の手紙が入っていた。
写真は、あきらを盗撮したような1枚と、自分で撮影したと思われる、あきらの父「明人」の写真。
手紙にはこう書かれていた。

(如月夜流くん、あきらをもう抱いたかな?あの子は感度もいいしかわいいし、声もいいし最高だろう?柔らかくて肌は白くてマシュマロのようで、自分から欲しがって足を開くんだ。何回あきらの体に、情欲を注いだのかな?あの子はねだってくるだろう。もっと、もっとと声をあげて腰を振る淫乱な子だ。淫乱すぎて、俺は何度もあきらを抱いたよ。朝まで。可愛がってやっておくれ、あきらを。俺の、代わりに、ね。)

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「あの部屋!!!」
手紙を、もっと違う場所で、外で処分するんだった。もしも、あの手紙や写真をあきらが見てしまったら。
見てしまったら。

怖くて、夜流は一瞬部屋の中に入るのを躊躇した。

でも、その部屋の中から、あきらの泣き声が聞こえてくる。

「ひっく、ひっく・・・・・」
月明かりの中、あきらが、大きなベッドに蹲って泣いていた。
「どうしたんだ、あきら?」
おそるおそる声をかける。
あきらは満月の空を見上げた。
「俺・・・・・時折、思い出すんだ。親父に、本当は何されたか・・・・手紙、きてたんだ・・・・読んじゃった・・・おもい、出しちゃった・・・・全部」
「あきら・・・・・」
「俺汚いよ!俺汚い!!」
「あきらは、汚くなんてない」
そっと、ベッドの近くに歩いていく。
あきらは、涙を流したまま、近づいてくる夜流を見つめる。
「お前、ほんとは心のどこかで、絶対俺のこと汚いって思ってる!」
「そんなことない!お前のことが好きだ!大切に思ってる!誰よりも!!」
「嘘ばっかり!」
「嘘じゃねぇよ!!」
二人は、月明かりの中、怒鳴りあった。

「お前を守るって決めた。俺は、あきらのナイトだろ?」
「こんな王子様がいるかよ・・・父親にレイプされまくった王子様なんて、汚いしゴミだ」
「そんなことあるかよ!」

「同情で好きって言われても、嬉しくねぇんだよ!!」

「あきら・・・・」
「あ・・・・ごめん」
あきらは、夜流が自分を捨てていきそうな気がして、必死で近くにきた夜流にしがみついた。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!」
涙をボロボロ流して、あきらは夜流に謝った。
「ごめんなさい!俺のこと、捨てないで!友達でいいから、俺の側にいてよ!ごめんなさい!!」
「泣くなよ、あきら」
「ごめんなさい!」
「もういいって、あきら」
「汚いけど、俺、夜流に守ってもらうのに相応しくないけど、でも!」

「もういいって!!」

ビクリ。
あきらの全身が震えて、そして止まる。
ボロボロ涙を流して、そしてあきらは目を閉じて、銀色の波を頬に溢れさせながら、夜流を見上げた。

「俺・・・・お前の、ことが、好き」
「あきら」
「受け入れてもらえないって分かってる!でも、俺、お前のことが・・・多分、友達じゃなくって、恋愛感情で好きなんだ・・・・・俺、最悪だよな」
「あきら」
「お願いだから、夜流、友達、止めないで。俺のこと、気持ち悪いだろうけど、お願いだから、俺のこと捨てないで!!」

「あきら」

「ヨル?」

あきらに、触れるだけのキスを夜流はした。
「俺が、あきら見てなんで鼻血流すのか知ってるだろ?お前のことが好きなんだ。お前に欲情してんだよ、俺。お前のこと、そういう対象で見てる。おれのほうが汚い。最悪だろ?」

「そんなことない!夜流は、夜流は俺の俺だけのナイトだ!!」
「じゃあ、あきらは俺の、俺だけの王子様だ!」

夜流は、涙を流し続けるあきらをぎゅっと抱き寄せて、そのままベッドに押し倒した。
耳元で囁く。
「あきらを抱きたい」
低い夜流のセクシーな声に、あきらは背筋がぞくぞくした。
「いいよ。抱いて。夜流になら、抱かれてもいい」

「後悔、しない?怖くない?」
「後悔、しない。夜流なら、怖くない。何されても平気。大好き・・・・」

あきらからの拙いキス。

「俺が、お前を守るよ。あの悪魔からも・・・・」
夜流は、あきらのパジャマのボタンを外していった。

 



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