「新学期」A







カラオケで、女子高生の3人と哲は盛り上がりまくった。
最近のアーティストの歌から昔のメドレーまで歌いまくる。
夜流も、適当に自分の好きなアーティストの新曲を歌う。そこでもやっぱりあきらは、黙りこくっていた。
「あきら君も歌いなよ〜」
小百合からマイクを渡されて、あきらは戸惑うけど、でも曲を選択する。

エンヤ。
綺麗な英語の歌詞が流れる。
美しいあきらの喉から広がる音のハーモニーに、夜流も驚いた。
あきらが、こんなに歌がうまいなんて、知らなかった。
いつも、透やマサキなんかも一緒にいるとき、カラオケにいっても聞くだけで、歌ったりしないから、てっきり音痴なものなのだとばかり思っていた。
これは、プロレベルだ。
あきらは、続けてオリガの歌を歌う。ロシア語を完璧にマスターしている。続いてドイツ人歌手の歌。ドイツ語も完璧だ。

「きゃーすごーい」
「声綺麗!」
「まじ感動した、あたし!」
女の子三人はわいわい賑わって、あきらをとりまく。
あきらは、ぎこちないながらも笑みを見せる。
あきらも携帯のメアドを聞かれたけど、携帯はもっていないと首を振った。
ほんとは持ってるけど。
メールがきても、どう返信すればいいのか分からないし、今のところ夜流という決まった恋人がいるので、夜流とのメールばっかりが着信履歴にあって、余計なメールはいらないと思った。

「ねぇ、あたしとつきあわない?夜流くーん」
月菜が、夜流にしなだれかかっている。
胸があたっている。
夜流はどう返事したものかと思ったけど、いきなり月菜は夜流にキスをした。
「ちょ、月菜!」
「いいじゃん、キスくらい」
「もー、手はやいんだから〜」
遥と小百合は、呆れていた。
哲も呆れていた。
でも、あきらは。
ぐっと下唇を噛んで、目をそらす。

いいたいけど、いえるわけがない。
夜流の恋人は、自分だって。
いいたいけど。でも、いえない。
こんな場面で。

「ごめん。俺、付き合ってる人いるから」
夜流は、アピールしてきた月菜をすぐに振った。
「夜流、ふるの早すぎ!」
「だって興味ねーし」
しんと、カラオケルームが静まり返る。
「じゃあ、あきら君、あたしと付き合わない?」
小百合が、同じようにあきらに告白する。そして、月菜を真似するように、あきらの手をとってこちらを振り向かせると、キスをした。
「キャー、小百合だって手はやいじゃーん」
哲はおろおろしだした。
夜流の目の前で、小百合はあきらのサマーセーターに手をかけたのだ。
「ん・・・・これ、キスマーク?こっちにも・・・・」
パンと、小百合の手は夜流によって弾かれた。
右肩が露出したサマーセーターを元に戻してから、あきらを引き寄せる。
「あきらにさわんな」
哲は顔を真っ青にした。
頬を紅くしてうつむくあきらに、あきらを庇って抱き寄せ怒っている夜流。これじゃ、ばれないほうがおかしい。
夜流が月菜を振った時より重い静寂。

「何・・・そういう、関係なの」
「やっだー哲、どういうことよ!」
遥が、哲に食いつく。
「や、それはあのな・・・・」
哲はパニックになりかけていた。

「お、おれっ・・・・帰る!!」
あきらが立ち上がり、自分のバックを持ってカラオケルームを飛び出す。
「待てよ、あきら!」
あきらを追いかけて、カラオケルームを飛び出した。

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「逃げることないのに〜」
「?」
一人取り残された哲は頭に?マークを浮かべる。

「あたしら」
三人は顔を見合わせて。
「「「腐女子だから」」」
月菜、遥、小百合は本物みちゃった、早速同人誌のネタにしなきゃとかキャッキャと盛り上がっている。

「・・・・・・・・・今時の女子高生って・・・・つええ」


哲は、がっくりとうなだれるのだ。

 





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