2014の秋。 携帯に電話がかかってきた。 ベッドでうとうとしていた夜流は、それに出る。てっきりあきらかと思った。 こんな時間に平気でかけてくるのはあきら以外にいない。 「・・・・・・・・・・・・」 「もしもし〜あきら、何時だと思ってンだよ」 「・・・・・・・・・」 「あきら?」 「・・・・・・・・・・・」 相手は無言だった。 いたずら電話だろうか。 切ろうとして、夜流は半分寝ていた脳が覚醒するのを感じた。 「如月夜流くん」 「誰、だよ」 「あきらの父、明人だよ」 「てめぇ!なんで俺のアドレス知ってやがる!!」 「それは秘密かな」 「てっめぇ!!!」 もしもその場に明人がいたら、思い切り殴り飛ばして蹴り飛ばしていただろう。 あきらに日常的に暴力を振るい、幼かったあきらを性的虐待していた男だ。最低の父親だ。 「あきらとは、随分仲がいいようだね」 「てめぇには関係ねぇ!」 「覚えておくといい。君はね、俺の代わりにあきらを抱く代用品だよ」 「何抜かしてやがる!!」 「抱いたんだろう?あきらを。あの子は自分から足を開いてねだってくる淫乱な子だ。君以外にも、男に足を開いているかもねぇ。昔は俺が満足させてあげれたんだけど」 「殺す!ぶっ殺す!」 「おやおや、物騒なことだ」 明人は、携帯の向こう側で面白そうに笑っていた。 「あきらの、感じる場所、全部知ってるよ俺は」 「最低の男がっ!」 「おやおや、それはあきらを抱く君も最低じゃないのかね?」 あきらに情欲をかんじ、それをぶつける自分が最低とはいいきれない。 言葉に詰まる夜流に、明人はほんとうに面白そうに、まるで猫が鼠を弄ぶような反応を示す。 「君も、かわいいね。あきらほどじゃないけど。綺麗な顔をしている。そうそう、君とあきらの友人の透君といったっけ?あの子は好みだなぁ。女の子のようにかわいい顔をしているじゃないか。純心そうだし」 「てめぇ、透に何かしでかしたら、ただじゃますまさねぇ!!」 「元気があっていいことだ・・・・・」 明人は、また声をあげて笑った。 相手の向こう側のアドレスが分からない。 特種な携帯でも使っているのだろうか。 「・・・・・・・もうすぐ、俺はあきらを迎えにいくよ」 その言葉に全身が戦慄した。 あきらが、またこの最低のあくまの手に落ちるというのか。 それだけは、絶対に死守しなければ。 「わたさねぇ。てめぇみたいな人間の屑に、あきらは渡さない」 「ははは・・・あきらを自分のものだと思っているのかい」 「関係ねーだろ!このくそやろうが!!」 「夜流くんといったね。顔は綺麗なのに、言葉が汚いねぇ」 「気持ち悪いんだよ!俺の名前呼ぶな、ゴミヤロー!!」 「はっはっは。本当に、元気がいいことだ。ではね」 プツリと、明人からの電話は切れた。 「ちっくしょー!!!」 壁に拳をぶちあてると、隣の親の寝室からうるさいと怒鳴り声が聞こえた。 夏樹明人は、フィリピンにいったのかどうか知らないけど、確実にあきらの近くにいて、虎視眈々とあきらを自分のものにするのを狙っているのは確かだ。 夏休み前、夏樹家にやってきた、明人のとったあきらを隠しカメラでとった写真。 最悪、本当に近くにいるのかもしれない。 ************************* 「ははは・・・・元気のいい子だな」 「明人さん、あんまり夜流の携帯にかけないで下さいよ。へたすると、僕が教えたってばれるじゃないですか」 愛人の息子、雪白学をベッドに押し倒して、夏樹明人はクククと声もなく笑った。 「愛してるよ、あきら」 「だーから、僕はあきらじゃなくって学・・・って、何度いってもあなたは僕のこと、あきらって呼ぶの直らないけどね」 学を抱きながら、明人は思う。 代用品じゃなくて、本当のあきらを抱きたいと。 めちゃくちゃに犯して、壊したい。 毎日毎日、可愛がってやりたい。 昔のように。 NEXT |