「学園祭」A







予備のメイド服では足りなかったので、急いで制服をつくっている店にオーダーメイドでメイド服が8人分頼まれることになった。
ちゃんと寸法、スリーサイズまではかってからだ。
オーダーメイドとか、お金がかかるだろうに、この高校は進学校であると同時に金持ちが多く通う学校でもある。寄付金でまかなっているのでとにかく学園祭は派手に行く気らしい。学校側も。

文化祭当日がいよいよやってきた。
メイド役に選ばれた8人・・・・あきら以外には最悪の日だ。

「夜流〜見てみてかわいい?」
あきらのメイド服はさらに特注。
ゴスロリが入っている。ヘッドリボンをふりふりさせて、夜流の前でくるりとまわるあきらは、美少女すぎてもうそれをみたクラスメイトは言葉もでない。
「あきらって・・・生まれてくる性別間違ってると思う」
一人がその言葉に頷く。
「俺もそう思う・・・・」
「俺も・・・」
みんな賛同する。
ツインテールの髪はいつも通り。
ストレートの茶色の明るい髪。茶色の明るい瞳。
中性的とかとんで、もう美少女の中の美少女にしか見えない。

「うおおおおおおお」
透は、メイド服をきてヤンキー座りをしていた。
タバコのかわりに、シガーレットチョコを食べていた。
「うおおおお・・・・俺、こんなかっこうおふくろに見られたら・・・・死ぬ」
しくしくと、同じようにくじに負けた5人の男子生徒が泣き出す。
スネ毛ぼうぼう。足は筋肉つきまくりで、もうお笑い要素でしかない。
「ついでに、今年も女装コンテストするんだってよ。すでに、あきら、夜流、透はエントリー済みだ!無論、推薦・・・つか、首絞めるのやめろ、夜流、推薦したの俺だけじゃねぇよ!クラスのほとんどみんなだっての!」
実行委員長が、ボキボキと骨を鳴らす夜流から逃げる。
「ガルルルルル!!」
「だめだ、夜流のヤツ、肉食動物になってるぞ!」
「ガルルルー!!」
近くにいた実行委員に噛み付くかわりに頭を思い切りはたいた。
「うぎゃああ、逃げろ逃げろおお」

「こういうときはあきらだ!あきらを盾にしろ!!」
「夜流?どうしたの?」
びくびくとあきらの影にかくれる数人の友人たち。

「あきら、かわいい」
きょとんとして目を丸くするあきらを、夜流は抱き締める。

「うおおお、百合だ!百合になってる!」
「夜流も背高いけど似合ってるからなぁ・・・・百合だなこれは!!」
奥さん、百合ですってよとかこそこそ言い合う友人をどつきまわして、夜流はまた不機嫌になった。
「ガルルルル!!」

「あー。俺、マサキと哲呼んじゃった・・・・へへへ・・・・」
遠い目で、透が窓の外を見ていた。
「マサキと哲、なんていうだろうなぁ。あー」
透も随分かわいくなった。もともと女の子のようなかわいい顔をしているだけに、メイド服を着てもばっちり似合っていた。
あきらほどじゃないけど、それでもすごくかわいい。

「へへへ・・・もう俺・・・・人格捨てるわ」
よいしょっと立ち上がって、透は自分を捨てた。
「はいはいみんな、蟹股で歩かないの!女の子は、もっとかわいく歩くものよ!ほら、そこすね毛があるからって気にしないの!ほら、お客さんがそろそろ集まるわよ!」

「すげぇ・・・・透、なりきってる」
友人みんなが感心する。
「男捨てたな、透のやつ」

「ガルルルル!!」
夜流はまだ、友人を追い掛け回していた。

「じゃあ、俺外で呼び込みするね?」
あきらが教室の外に出ようとするのを、友人みんなががしっと止める。
「はひ?」
「だめ。あきらはその格好で校舎うろつくな」
「なんで?」
「危ないから。絶対ナンパされてどっかに連れ込まれる!」
「えー?俺かっこいい男だよ?めっちゃかっこいいじゃん」
あきらが、自分のことをあくまでかっこいいと思っていた。
「お前は鏡を見たことがあるのか!」
「えー?あるけど・・・・すっげぇかっこいいぜ俺?」
「ガルルルルル!!」
「おい、夜流なんとか言ってやってくれよ。このままじゃあきらがナンパされまくりだぜ」

「あきら」
「ん?」
「俺と一緒に、ウェイトレスな」
「えー。なんでー」
「呼び込みは・・・・責任をとってメイドの一人になったこの雪白学がいってくるらしいぞ」
「ちょ、僕ですか!?」
自分におはちがまわってくるとは思ってこなかったので、学は慌てた。
ちなみに、学もかなり似合っている。

「おーがんばれ学〜」
みんなに手を振られて、学は泣く泣く女装メイド喫茶の呼び込みに教室を出て行った。
 




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