「学園祭」E







学園祭二日目。
今日が最終日だ。
連休の土日を利用して行われる学園祭、今日のメインはなんといってもミスコンとイケメンコンテストと・・・なぜかある、女装コンテスト。
午前中は女装喫茶で最後の仕事におわれていたあきら、夜流、透は昼休みを終えて、時間が近づくに従って、ため息ばかりだしていた。

わーわーと人だかりが集まる中、さっそくミスコンが行われ、次にイケメンコンテストが行われて、2014年度のミス私立ヨーゼフクィーンと、キングが誕生した。
本来なら、イケメンコンテストに出るはずだった夜流と透。
もうあきらは美少女にしか見えないので、もともと女装コンテストへの出場は決まっていた。というか、勝手に透と夜流が推薦してしまった。でも、クラスのほぼ全員があきらを女装コンテストへ推薦していたので、怒るに怒れない。
夜流はメイドの格好から、女子からかりたブレザーの女生徒服を着て、透も同じくメイド姿を着替えて渡された、ヨーゼフ学院ではない、セーラー服をきていた。
他に何人か推薦されて・・・もしくは参加賞の1万円分の図書券が目当てで自分から立候補した・・・笑うしかない格好の男子に紛れて、あきらは似合うからそのまんまと、フリルとレース、それにリボンがいっぱいのゴスロリメイド服のまんま。
「はーい、今年もやってまいりました!2014年、今年を制覇する怪物・・・・じゃなかった、かわいこちゃんはこの子たちだーー!!」
ジャジャジャーン。
音が鳴った。
「はぁ・・・」
夜流の肩を、同じく重いため息を出す透がぽんぽんと叩く。そのまま二人はがしっと拳を握り合って。
「泣くなよ」
「お前こそな」
すでに二人の目のはしには熱い友情の涙・・・ではない、屈辱と恥ずかしさの涙が滲み出ていた。
「トップバッターは2年A組、里中猛くん!おおっと、これは・・・・これは・・・・」
「おえええ」
「おええ」
「おえー」
観客たちが目を背ける。
女子スクール水着を堂々ときた、筋肉ムッキムキのヤローが登場してきた。
「これは最初からバットで頭を殴られたような衝撃だ!次いってみよう、3年C組明智仁君・・・おおっと、これはかなりいい線いってるのでは?お次は〜」
どんどんと、最初のメンバーが登場して、いろんな野次を投げられたりしている。
はっきりいって、夜流と透とあきら以外、何故か体育会系のヤローばっかだった。
「お次は如月夜流くーん!!学校でもイケメンとして名高い1年B組の彼の出番だーー!」
「骨は拾ってやるよ、夜流」
「おう。逝ってくる」
「おーっと。これは、女子学部の制服かー!?これは今までにない高得点がでそうだー!!」
女子はみんなきゃーきゃーいってはしゃいでる。
男子生徒から、夜流似合ってるぞバーカとか、笑い声が飛ぶ。
「うぬぬ・・・・・あとで、みんなまとめてスクラップにしてやるう!」
壇上で、夜流は吼えた。
「お次は・・・・おお、これは優勝候補の、美少年として名高い、1年B組の、十音透君の出番だー!泣かしてきた女の数は、如月夜流君といい勝負か!?」

出てきた透の美少女ぶりに、会場のみんなが静まり返る。
それから、やんややんやの喝采。

「最後は・・・・おおおお、これぞメシア!ヨーゼフ高等部、男子学部に現れた我らのマリア「天使の微笑み」を武器とする・・・・夏樹あきらちゃんの登場だー!衣装から気合入ってるー!泣かしてきた男の数は星の数!これはもう、夏樹あきらちゃんと十音透ちゃんと如月夜流君3人のデッドヒート!!さぁ、さぁ、会場にお集まりのみなさん、ぜひ審査員として票を!!」

ばかげた女装大会。
もう、ミスコンやイケメンコンテストより大盛り上がりだ。

「審査結果を途中発表します・・・・というか、この三人以外に票は入っておりません!むむ、この三人に突撃インタビュー!!まずは如月夜流ちゃん、何か一言!」

「・・・・・・・・・・・ぶっ殺す!!」


「おお怖い!でも、膝丈スカートが心元なさそうでおさえる仕草がぐっとくるぞ!次は十音透ちゃん!」

「へい、俺に票いれたら・・・・・・金玉蹴りつぶす!!」

スカートから足が見えるのも構わず、空中に蹴りを入れる透に司会役は身震いした。
「おおっと、こっちも怖い!俺の局部も蹴りつぶされるのか!?最後は夏樹あきらちゃん!!」

「・・・・・・・こっちみんなや。あぁ?全員、コンクリで固めて大阪湾に沈めるぞあぁん?・・・・やん!」
背後から、タンカを切るあきらのスカートをめくる夜流。
「やー、見るな、見るなってば!!見ちゃダメ!」
ガーターベルトがちらりと見えた。
スカートを押さえて、夜流を殴り飛ばす。
ぜぇぜぇと荒い息をつく。殴り飛ばされた夜流はとっても幸せそうな顔をしていた。

「きた。コンクリで大阪湾に沈められる前にイった。おおう・・・・もう俺もだめ」
司会役はダウンした。
急遽、別の司会役が出てきて、票を数える。

「審査の結果、一番票を獲得したのは・・・・今年の2014年ミスヨーゼフプリンセスは!!」
スポットライトが、三人に光を浴びせ、そして、透の前でとまった。

「十音透ちゃんだーーー!女子票を圧倒的に獲得したようです!タンカを切る美少年ぶりがよかったとか!かわいい、弟にしたいというコメントが多いぞ!?おしくも夏樹あきらちゃんは2位だ!こっちは妹にしたいとか彼女にしたいってコメントが多い、でも夏樹あきらちゃんは男だぞ、みんなー!」
マイクを会場に向けると。
「女装コンテスト最高!!」
そんなみんなの声が返ってきた。
例年にない盛り上がりようでみんなハイテインションだ。
「優勝した十音透ちゃんには、校長先生から、女子学部の制服が授与されます!!」
「んなのいるかああーーーー!!!」
三位だった夜流はほっとしたけど、すぐにぎょっとする。
票が入らなかった女子スクール水着を着たトップバッターの里中猛くんが、ハンカチをきいいと噛み締めて、マイクを持って叫んだ。

「あたしが一番綺麗なんだから!!」

「「「あーうん。それでいいんじゃない?」」」
夜流も透もあきらも、どうでもよさそうに同意する。

こうして、2014年秋の学園祭は熱狂と共に終わった。
ちなみに2位のあきらの商品はマンガ「風と木の詩」・・・昔懐かしい、BL漫画のさきがけとなった作品だ。これでなにをしろというのだ。
3位の夜流の商品は・・・月刊兄貴帝国半年分。
・・・・・・・・これで、なにをしろと。
ほんとに、なにをしろというのだ。参加賞の図書券1万円以外、使い道がない。
あきらは、「風と木の詩」を帰り道電車に揺られながら読んでいたけど。まぁ、中古として古本に売る手があったか〜とか、同じく読みながら、なんともいえない気持ちになる。
「夜流にこのコミックあげる」
「あーうん。めっちゃ嬉しい。さっそく売り飛ばすわ





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