2014冬「クリスマス」@







2014年の冬クリスマス間近。
もう高校は冬休みに入っている。
都市から少し離れた山岳部では雪が降り積もっている。
あきらや夜流が住むベッドタウンは、ちょうどその中間地点。家が立ち並ぶ中に緑地化計画として懐かしい田んぼがあったり、公園が多くあったり。
森なんてものはないけれど、緑は意外と多い。

ちらちらと降り積もる雪を自宅のリビングルームから見上げて、あきらは隣の夜流を見た。
「なぁ、これつもるんじゃね?」
「そうだなぁ。つもりそう」
「そしたらさ、マサキと透と哲誘って雪合戦しようぜ!!」
あきらは嬉しそうにはしゃいでいる。
暖房のよくきいた室内だから、寒さなんてものはないけど、外に出たらコタツに入りたくなるような気温だ。
「お前、寒いの平気なの?体弱いから、すぐ風邪ひくだろ」
「平気平気」
といいつつヘッションとかくしゃみをするあきらに、夜流は薄い毛布をかけてやった。
「んー。ありがと」
「熱だすなよ。雪合戦するんだろ?」
「うん、もち!あと雪だるまも作ろうぜ!!」
そこまでつもってくれればいいけどなぁ。
「つもらなかったら、ちょっと田舎のほういって雪あるとこまでいきゃいいじゃん」
「そこまでするかよ普通」
「するする!俺はする!」
毛布を頭からかぶって、あきらはニシシシと笑った。

見た目は凄い美少女なんだけど。やっぱり中身は少年なんだなぁと思う。
仕草がちょっと女性っぽいところがあるときもあれば、不良相手にケンカうったり、男として強かったり。
あきらは中性というのが一番しっくりするかもしれない。
見た目は美少女中身は少年。それがあきらだ。

夏樹あきらと出会って、もう1年以上経過したのかと、夜流はふと思った。
友人になり、そして恋人同士になって。
出会いは運命。だとしたら、きっとあきらと出会ったことも必然。

************************************

12月24日。
クリスマスイブ。
雪はつもった。それこそ、雪合戦ができるくらいに。
昼に透、マサキ、哲を誘って、いつもの公園であきらと夜流は寒いのも忘れて小学生のようにみんなではしゃいで雪合戦をした。
「哲、アウトー!」
雪玉を投げたあきらの顔に、透が投げた雪玉があたる」
「はい、あきらもアウトね」
「ずっりー!透、今背後からきただろ!」

「雪合戦にルールもなにもあるかああ!!」

透はもっともなことをキシャアアと叫んで、手当たり次第に雪玉を投げまくる。それを器用に夜流はよけ続けて・・・・そして、雪玉というか、手に雪をもって、それをゴシャッと透の顔面に食い込ませた。
「はい、透もアウト。勝者俺」
「ずりー。夜流ずりぃ!それ雪玉じゃねーじゃんか」
「はいはい。負け犬君はあそこで雪ウサギつくっていじけてるマサキのとこにでもいってこいや」
透は、すぐにマサキのところに走っていった。
開始早々、全員の集中攻撃を浴びて一番にアウトになったマサキはしょげて、つまらないので雪ウサギなんかをつくりだしていた。
その隣では、哀愁を誘うように同じく次にアウトになった哲が一生懸命雪ウサギを作っている。
「マサキ・・・・俺また振られた。高校入って25回目だぜ・・えへへへ」
「告白しすぎだろ」
雪ウサギの耳の部分に枯れ葉を埋め込んで、マサキは後ろから透に抱き疲れて前のめりに倒れこむ。
「ぬおおおお、俺のうさちゃああああんん」
なんとか、つくった雪ウサギをつぶさないように透を首からぶら下げたまま、マサキは立ち上がると、そのまま透を引きずってコンビニにあったかな飲み物を買いに行ってしまった。

「俺も雪うさぎつくるー、夜流はお手伝いね」
あきらは、哲の隣にしゃがみこむと雪をかき集めはじめる。
「はいはい」
雪合戦をもう3回もやった。最初は何度当たってもOKだったけど、息があがってきたので3回目は一度当たったら負けというルールでやっていた。
「らららら〜〜」
意味不明の歌を歌いながら、あきらは雪ウサギっていうか、よく分からない物体を作り出していく。
あきらの美術の成績は2。
あきらと夜流がお互いに似顔絵をかきあった美術の授業では、あきらの絵はクラス中のみんなから笑われた。
左手で、かいたようなのたくった線に、はみでまくった色。
小学生の低学年の作品みたいなかんじで。
イケメンなのにすっごいぶっ細工に夜流を描いたあきらの絵は、なぜかコンクールで佳作をもらった。
ピカソの再来の卵の卵のうずらの卵の欠片。
それが審査員の評価だった。
ようは、ピカソのような天才にもなれないけど、でもちょっと方向性をかえれば光るかもれいない?、ということらしい。
その審査員の目は、きっと腐っていたんだろう。

「でーきたー!!」
完成したあきらの雪うさぎ。

「こ、これは!!!」
「おおお!」
「すげーー!」
「すっげ!」
帰って来た透とマサキも圧巻された。

真っ白い・・・雪でできたでかいゴキブリ像だった。

「こんな白いゴキがかさかさ床をはってると思うとひいい、マサキーー!!」
透はマサキにぶらさがる。
「どういう腕だよあきら・・・お前、天才なのかアホなのか分からなくなるわ、俺」
夜流は、クションとくしゃみをしたあきらに、自分の首に巻いていたマフラーを巻いてやるのだった。




NEXT