「クリスマス」A







「雪だるまつくろうぜー。ドラエモンな!」
雪だるまなのは分かる。なぜそこでドラエモンになるのか。あきらの選択肢がよく分からないみんなは、でもあきらの言葉に従って雪をかき集めて固めていく。
無言で、1時間が過ぎた。
みんな無言で、ペタペタかきあつめた雪を雪だるまの形にしていく。
普通よりちょっと大きめの雪だるま。
そこからが、あきらの出番だった。雪をけずり、顔をかいて・・・・ぐんにゃりとした、たとえるなら・・・3トンの重りに押しつぶされたあとにドアに挟まってペシャンコになったのを、無理やり空気をいれて膨らませたようなドラエモンの雪だるまが完成した。

みんな、頬がひくついている。

「完成!俺って天才!」
わーわー。
パチパチと四人は拍手したけど、もうだめだった。
「ブバー!」
「ぶふ!」
「ぎゃははは!」
「あへへへあはは!!」
ばんばんと、地面を叩いてみんな笑いまくる。
「へ?どうしたんだよ。何がおかしいんだよ?」
「い、いやなんでも・・・・あきらの芸術的センスに・・・・あまりにもすごくて感動しただけ、だからっ」
笑いながら、透が携帯を取り出して傑作のドラエモンの雪だるまを映す。
みんな、その手があったかとパシャパシャととりだす。
「はい、あきら横にならんで」
「ほいほい」
黒のニーソにふわふわの膝丈ミニスカート、それに何枚か上は重ね着をして、黒のロングコートを身にまとっていた、いつも通りの少女な服装のあきらはひしゃげたどらえもん雪だるまの隣にならんで、天然のかわいい微笑をつくる。

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その日は、6時頃までそうやって子供のようにみんなで公園で遊んでたり、一番近い哲の家で格闘ゲームをしてから、あきらは夜流と一緒にみんなと別れた。

ポッポッポッ。
街路樹のイルミネーションが点り始める。
二人は手袋をした手を握り合って、繁華街を歩く。
イルミネーションを見るために。
繁華街で、一番綺麗にイルミネーションを施された木や建物なんかを見上げて、あきらは感嘆の息を吐く。
それは真っ白になって、冬の空気に溶けていく。
「綺麗・・・・」
「だろ。あきら、イルミネーションとか見に来るのはじめて?」
「うん・・・あんまり、外出できなかったから前は。冬の町って、こんなに綺麗なんだね」
「じゃあ、来年もまたこようぜ。ここに」
「うん」
あきらはにっこりと微笑んだ。

「あきら、今日はどうする?」
「ん?泊まりに、くる?」
「うん」
「ケーキ買ってこ!クリスマスケーキ。二人でお祝いしよ!」
「そうしよっか」
携帯で、夜流は祖母にあきらの自宅に泊まることを連絡して、携帯をきると、ふと思いついて財布の中身を見る。
夜流はあきらと一緒になるべくいるために普通のバイトはしていない。小遣いはそれなりにあるが、みんなと遊び歩いていくので尽きてしまう。夜流は11月からこっそり、自宅にいるときにだけできる、PCのプログラミング関連のバイトを暇なときやっていた。
全部、あきらと自分のために。
「ちょっとATMいってくる。お金、おろさないと」
「なんで?クリスマスケーキそんなに高くないだろ?」

「いいから・・・あきらは、ここで待ってて」
「うん」

しばらくして、ATMから夜流が出てきた。口座に振り込まれたお金を全ておろして、手を繋いで首を傾げるあきらを連れて繁華街をまた歩く。
そして、ショッピングモールにやってくるとその中に入っていった。



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