「クリスマス」D








二人揃って、一緒にシャワーを浴びて、それからお揃いのパジャマを着た。
二人は、あきらのベッドでいつものように眠る。
寝息もたてないあきらの体を抱き寄せて、夜流は高く登った下限の月をベッドの上から仰いだ。
「いつまでも・・・・こうして、いられたらいいのにな」
「ん・・・・」
あきらがみじろぎする。
それから、パチリと大きなアーモンド型の茶色の瞳が目を開いて、視線を彷徨わせたあと、夜流の、文字通り夜の闇のような漆黒の瞳をとらえる。
「寝れないの・・・・?」
「ん・・・ああ、ちょっとな」
「ねぇ、来年も一緒に祝おうね、クリスマス。あと、夜流の誕生日も」
「ああ。でも、まずは先にあきらの誕生日だな」
二人はベッドの中で丸くなって、お互いの体温を共有しあいながら、一度目を瞑る。

「夜流の心臓の鼓動が聞こえる・・・」
「俺も、あきらの心臓の鼓動が聞こえる」
トクントクンと静かに脈打つそれは、互いの絆でもあるような気がした。錯覚かもしれないけれど。

「年があけたら・・・・初詣いこ!透も哲もマサキもみんな一緒に」
「おう、いいぜ」
「楽しみだなー。振袖きてこーっと」
「じゃ、俺も和服着てくかな」
「え、まじで?」
毛布にくるまったまま、あきらが夜流のほうを見る。
「見たい!和服の夜流すっごい見たい!きっとめちゃくちゃかっこいい!」
ちなみに、あきらには普通の男の和服という選択肢は脳内になく、最初から振袖の選択肢しかなかった。
母親の瑞希が、年明けには絶対に振袖をあきらに着させるだろうから、まぁ仕方ないといえばそうかもしれない。
「俺も、あきらの振袖姿みたいな」
「なんなら、明日にも着てみようか?」
「それはダーメ。楽しみは後にとっとくもんだぜ」
「うん、わかった」

目を瞑ると、またトクントクンという鼓動の音が聞こえた。
「不思議だね・・・・」
「何が?」
「俺たち・・・・兄弟なのに・・・・こうして、恋人同士で愛し合ってる・・・」
「別にいいだろう。道徳なんてどうでもいい」
「うん・・・俺、夜流の弟としてはダメかもしれないけど、夜流の恋人としては・・・・」
あきらは口ごもる。
「血が半分繋がったって分かったからって・・・・そうそう変えられるもんじゃない。あきらを弟してなんか見れないし。俺の恋人としてしか、見てない」
「うん。俺も。夜流がお兄さんなんて思えないし。血の繋がりって、大切なようでけっこうあやふやなんだね」
「そうだな」
明人の血で、お互いは血が繋がっている実の兄弟だと分かったけれど、二人は別れることを選ばなかった。もともと同性同士で付き合っているという時点でおかしいのだ。そこに実の兄弟ということが加わっても、心の傷が痛むわけでもない。
二人は純粋に恋人同士として愛し合っている。
それが一番大切なのだ。
問題は性別だとか家族だとか・・・そんなんじゃない。心が、大切なんだ。相手を労わり、愛し、大切にするその心が。

「俺、でも夜流の弟でよかった!」
「なんだよ、いきなり」
「だって、夜流の特別に特別が増えたもん!!」
あきらは満開の花のように微笑む。
あきらからは、ボディーシャンプーの花の甘い香りがした。
「俺も、あきらの兄でよかった。他のやつが兄だったら、なんかあきらのこととられてそうで」
「あはは、考えすぎ〜」
夜流の腕の中で、あきらが声をあげて笑う。

シンと、一瞬静寂が室内を満たす。
夜の闇が、視界を覆う。
月が雲に隠されて光がなくなって、夜流はあきらを抱き寄せた。
「夜流?」
「消えそうな気がする。あきらが、いつか俺の手をすりぬけて・・・いなくなってしまう気がする。怖いんだ」
「バカだなー。俺が、夜流のこと置いていなくなるもんか!」
あきらは、夜流の頬に白い華奢な手を添えると、力強く断言した。
「愛してるから。いつでも、一緒だよ!」
「ああ・・・・」
その白い手をひいて、あきらの口に口付ける。
触れるだけの優しいキスを繰り返していたが、あきらが夜流の耳元で囁いた。
「抱いて・・・・」
「あきら?」
「お願い、抱いて・・・・」
あきらの懇願を、夜流は静かに聞き入れる。
パチリと枕もとの照明だけつけて、あきらにキスを繰り返しながら、あきらのパジャマのボタンを外して素肌に触れていく。

「ああ・・・・」
甘いあきらの声が、耳の奥に木霊した。
「あきら・・・・・・・・・」
パジャマの上を脱がして、タンクトップをたくしあげて、白い肢体に手を伸ばす。
あきらの胸をいじっていると、あきらはお返しとばかりに夜流の耳に甘く噛み付いた。
何度も胸の先端をいじり、吸い付いく。それから首筋に顔を埋めて痕を何度も残した。
「い、あっ」
あきらのズボンを下着ごと脱がして、そのままあきらのものに手をかける。
何度か扱って、手をはやめ、先端に爪を軽くたてると、あきらはあっけなく達してしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・うあああ」
透明なトロリとした蜜が、夜流の手を濡らした。
それをいつものように全部舐め取って、あきらを押し倒すて両足を開かせる。
「んっ」
ひくつく蕾に舌をいれて、動かすとあきらはシーツをぎゅっと握り締めて涙を零した。
「あ、あああ、あああ!!」
ぐりぐりと舌であきらの蕾をこじあける。
そこに、潤滑液を滴らせてぬるぬるとした指を挿入していく。
「んっ」
あきらは、夜流の首に手をまわす。
「あ、あ、もっと奥っ!!」
言われるままに、奥に誘われ、そこでばらばらに指を動かして、肉を犯す。
あきらの内部は、いつにも増して狭く熱かった。

 




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