「あきらU」A







「あ、あ、パパ・・・・やだ、やだよっ。優しくしてよっ」
ベッドの中で、涙を流し幼くなったあきらが父という名の、性的虐待を振るう悪魔にしがみついていた。
もう、何時間レイプされ続けただろうか。
そもそも、監禁されてから何時間がたったのかも分からない。
彷徨う意識の狭間で時折我に帰り、明人に暴言を吐いては殴られた。

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あきらが消息をたって、そのまままる二日が過ぎた。
夜流は睡眠も食事できず、あきらの家で明人がいそうな場所を考え込んでいた。何時間町を彷徨っただろうか。憔悴しきっていたところを警察に保護され、そのまま警察に任せなさいと大人は言う。
哲もマサキも透も、みんなあきらを探すのを手伝ってくれた。
でも、見つからない。
ホテルなんかに滞在していれば、明人は絶対あきらに暴力を振るうから、音なんかで気づかれるはずだ。
もっと違う、どこか・・・・賃貸マンションやアパートだろうか。
明人が自分の金で市内に家を買っているとは、あまり考えられない。瑞希の話では、明人は離婚した後に会社の金を勝手に横領しているのが発覚して首になっているそうだ。
でも、金に困っていそうなそぶりはなかった。
高級車を乗り回しているし。愛人でもなにかいるのだろうか。

夜流の考えはずばり的中していた。夏樹あきらは収入をなくしたが、株などを所持していたし、それに愛人の雪白学の母親からお金を受け取って、それで郊外に家を借りて何不自由ない暮らしをしていた。
市内にある邸宅には、あきらや母親の瑞希に、そこに住んでいるというのがばれないようにして、潜むときだけだ。あきらをその目で見るための、仮の住い。

一方、雪白学は、夏樹明人から携帯をかけられ、その声に戦慄した。
「学・・・・あきらを手に入れたよ。今度、君にも見せてあげよう・・・・あきら、ほら何かいってごらん」
「助けて!!助けてーーー!!」
明人の背後から必死で叫ぶあきらの声が聞こえてきた。
それに明人は。
「うるさいよ、あきら。そうじゃないだろう?はじめましてだろう?」
バシッ、ドガッ。
暴力を振るう音と小さなあきらの悲鳴に、学は顔を蒼白にした。
「ごめんねぇ、学。殴っても殴っても反抗するものだから、一度壊そうと思ったのになかなか壊れなくて」
学は携帯をきった。自分から。
あきらを手に入れるなんて、冗談だと思っていたんだ。
まさか、本当に。
これじゃ、犯罪じゃないか。
実の息子を監禁し、暴力を振るう、学が知らない明人の素顔に、学は吐き気がこみあげてきた。
いつも優しい明人は、そこにはいない。
いるのは、ただの悪魔。

「警察に・・・だめだ、それじゃ明人さんが犯罪者になってしまう・・・如月に!」
雪白学は、夜流の携帯にメールを入れた。
それはすぐに届き、夜流は内容を読んで、何か進展がないかと待っていた夏樹家を飛び出した。
(あきらは、ここにいる。明人さんを犯罪者にしたくない)
かかれた住所。
そんなに遠くない。ここから、5キロくらいの場所だ。自転車で飛ばせばすぐだ。
タクシーでもよかったけど、自転車のほうが小回りがきくし、タクシーだと明人にばれてしまうかもしれない。
「待ってろ、今すぐ助けにいくから!」
何故、雪白学が、明人とあきらの居場所を知っているのかは知らなかった。
自転車を息が切れるほど飛ばして、信号も無視して走り続けた。
そして、携帯のメールにかかれていた住所を一件一件確かめていく。
走って、走って、走って。
息をするのだって忘れるくらいに、無我夢中だった。

「警察!」
やっと明人が忍んでいるだろう豪華な一軒家を見つけたとき、夜流は警察に連絡し忘れていたのを思い出した。そのまま、警察にかけると、安全な場所で待機していないさい、すぐに応援を呼ぶからという答えが返ってきた。
夜流は、あきらはこれで助かる、と安堵するけれど、警察がくるまでの間にどんな扱いを受けているかも分からない。
夜流は単独で明人があきらを監禁している家の庭に忍び込む。そのまま、決心する。

俺は、あきらのナイトだろう。
命にかえても、あきらを守れ!

鉢植えでリビングルームの窓を破り、破片で傷をつくって血にまみれながらも、家の内部に侵入する。
2Fから、かすかなあきらのすすり泣く声が聞こえた。そのまま夜流は走りだす。武器は何もない。素手で応戦できるか分からなかったが、あきらの泣き声が聞こえるベッドルームの扉をあける。
そして、夜流の動きが止まった。
扉をあけて中に入ると、手首をロープで戒められ、ベッドに繋がれていたあきらがいた。
まるで犬か猫のように首輪をつけられていた。
「あきら!!」
明人の姿はなかった。
ほとんど全裸で、青痣だらけだった。暴力とレイプを受け続けただろう姿。
「おい、あきら、あきら!!」
何度揺さぶっても、反応が返ってこない。
すすり泣く声は聞こえるけど。
何十回目かの叫びに、あきらの焦点が夜流にあう。
「夜流?」
あきらは、ボロボロだった。
顔は綺麗なままだったけど、体中に痣があって暴力を振るわれたのは一目瞭然だった。
「助けてぇ、お願い、幻影でもいいから!!」
夜流は歯を食いしばって怒りに耐えていた。あきらの肩に手をかけると、びくっとあきらが縮こまる。あきらの体が無機質に振動している。あきらの中にいれられていたバイブを引き抜いて怒りのまま床に叩きつけると、大量の白い、明人のものであろう体液があきらの引き裂かれ、血を流し続けるそこからふとももを伝ってシーツに零れ落ちる。
「うあああ、見るなあああ!!」
「あきら!」
あきらは、夜流が本当にここにいるのだと知って、次に絶望した。自分の今の姿を見られた。明人にレイプされたのを知られた。

夜流は、あきらを戒めていたロープを全てとってやる。
ガクガクとあきらは震えて、自力で立つこともできないようだった。
たんすの中を勝手に漁ってあきらに適当な洋服を着させ、その肩から自分のコートを着せると、あきらを抱きかかえて夜流は玄関から外に出た。

 




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