「セカンド・ラブ」C







ペットショップの店員に頼んで、子犬や子猫を抱かせてもらったり、手乗りのインコの雛にエサをあげたり。
あきらは幸せそうだった。
家でいつも暇そうにしているから、たまにはこんなデートもいいかもしれない。
あきらが家に一人で帰れるか分からないので、母の瑞希はあきらに外出を控えるように言いつけてある。
でも、夜流が一緒なら大丈夫だろう。

あきらは、翼を羽ばたかせるように、夏樹家という檻を飛び出して、外出を楽しむ。
ペットショップでの探索が終わり、また噴水の広場のところにまでやってきた。
「あ・・・・クレープ売ってる」
「待ってろ、買ってくるから」
「うん」
あきらは笑顔を煌かせて、噴水の側にあるベンチに座る。
その間に、夜流はクレープを買いにいく。

あきらに集まる視線は、以前と変わらず多い。とにかく男の視線を釘付けにする。
女性が夜流に注ぐ視線も多いのだが、夜流はそんなものに気づいていたりしない。
あきらのことしか眼中にない。最初から。

「かわいいね、君。一緒に遊ばない?」
あきらを一人にする時の夜流の心配事といえば、これだった。
毎回毎回、とにかく繁華街あたりにいくと男にナンパされるのだ。
一人にしておくと、何度断ってもいろんな男から声をかけられて、あきらはしまいには泣きそうになるのだ。
昔は、タンカを切っていたりしたけど、記憶障害になってから、あきらの性格は少し変わってしまった。
消極的というか、大人しくなってしまったと思う。
余計、女の子らしくなってしまったともいえるだろうか。

「シーマンが言ってた。おっさん」
「は?」
ナンパしてくるちゃらついた男を睨みあげて、あきらはちょっと意味不明な言葉をかけていた。
「地獄一丁目の酒屋さんで待ってるから、そこに来てください。はい。さようなら」
簡単に完結させて、あきらは男に興味を失ったようにクリスマスに夜流に買ってもらったペンダントを指でいじっている。
「面白い子だなぁ。その地獄一丁目の酒場に案内してよ」
ちゃら男(略)は。あきらの横にあったスペースの同じベンチに座る。
「ダメッ!」
「え?」
「そこ、ナイトの座る場所なの!座らないで」
「ナイト?」
「そう。俺のナイト」

「そうそう・・・・俺のことだよ」
般若のような顔で、夜流はちゃら男を見下ろした。
「うっへ、彼氏いるなら最初から言えよ!」
ちゃら男は、舌打ちして去っていった。
「あっはっは、ナイト変な顔〜」
般若状態の今の顔を言っているのだろう。
「あきら、正解」
「何が?」
「ここは俺の座る場所。そして、俺はお前のナイト。あきらは俺だけの王子様」
やっぱり、お姫様ではない。
だって、あきらは少年だから。
王子様でいいのだ。
「俺、ナイトの王子様。ナイト家来ね」
「はは〜」
二人で声をあげて笑いあう。なんて穏かで静かで、そして甘くてちょっとすっぱいような、幸せな時間なのだろうか。
「クレープちょうだい。夜流の味が違うっぽいね。一口ちょうだーい」
「ほい」
クレープを手にもったまま、あきらに食べさせる。

5月の爽やかな風と一緒に空を見上げる。
太陽が笑っていた。
夜流の染めた金色の髪が、風に靡く。
「夜流の髪、綺麗だね。太陽みたい!」
「あきらの髪のほうが綺麗だって」
「そう?」
いつも通りツインテールに結って、黄色いお気に入りのリボンを飾っていた。





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