「日常」A







翌日、瑞希から許可をもらって、二人で旅行にいくための衣装を買いにいった。
あきらは変わらず女もののユニセックスな衣服を選ぶ。それに付き合ったあと、夜流も自分の服を買うために、ユニクロのお店に入った。
「うわあーひっろーい」
あきらが、店内の広さに驚いている。
ユニクロは安い、とは言い切れないが高くはないものばかり揃っている。
適当にTシャツやジーンズ、ハーフパンツなんかを選び腕に衣服をかけていると、ふと聞きなれた声に呼び止められた。

「あっれー、夜流じゃないか!」
「お・・・・」
そこであったのは、大学の友人だ。
新しく大学で友人になった蓮見健太郎。
「バイトか?ここで」
今日はそういえば、土曜で大学は休みだったか。
「ああそう、俺ここでバイトしてるんだよ」
蓮見はにこりと笑って、夜流の持っていた服を受けとる。
「お客様、他に欲しいものはございませんか?」
一応バイトとはいえ店員なので、あまり知っているとはいえお客様である人にそうそう馴れ馴れしくしゃべりかけれないだろう。
「ああ、これだけで・・・おおい、あきら!」
「はーい」
レジに通されて、あきらもやってきた。
あきらは首を傾げて、夜流の後ろに隠れている。

「合計で12600円になります」
「カード決済で」
夏樹瑞希が、夜流のために作ってくれたカードで決済を済ませる。
「ちょうど、俺休憩いくんだわ。ちょっと、店の外でようぜ」
レジのところに、休憩中という札を掲げて、蓮見は夜流とあきらと一緒にユニクロの店の外に出た。
ユニクロの店は、広い敷地を持っていて、スーパーやデパート、ショッピングモールの中にあるのではなく、単独で存在する。
蓮見は、店のすぐ近くの販売機から、適当にウーロン茶を3つ買ってくると、それうち2つをあきらと夜流に渡した。
「かわいいね。前も見たことあるけど。彼女?」
「ああ、うん。夏樹あきらっていうんだ」
「休学、まだ終わらないのか?」
「うん・・・もう少し、時間かかりそう」
「あんまり長く休むとマジで留年になるよ。やばいって」
「分かってるんだけどな・・・・・仕方ないんだ」
あきらは喉がかわいていたのか、もらったウーロン茶を一気に飲み干してしまった。
「うー、生き返る」
ちょっとおっさんくさい仕草をして、あきらは笑う。
「ナイト、ナイトのお友達?」
「ああ、蓮見健太郎っていうんだ。大学の友達」

あきらは蓮見を見て、こう言った。
「ふつつかな嫁ですが、よろしくお願いします」
「は?お前ら、入籍してるの?」
真剣な表情で驚く蓮見に、夜流はあきらの口を手で塞ぐ。
「もがー」
「いや、違う。将来結婚するって決めてるけど」
「もがーー」
あきらは夜流に口を塞がれて、じたばたしている。
「へぇ・・・・結婚前提の、お付き合いか。いいね」
「だろ」
夜流は蓮見と15分ほど話をした。
その間、放ったらかしにされたあきらはふてくされて、駐車場の隅っこに地面に直接座っている。

「夏にさ、北海道に旅行にいくんだ。その時の衣服買いに、今日はきたんだ」
「へー。まぁ、携帯でも何度か話したけど、俺も心配なんだよ。何かあれば連絡しろよ。力になるから」
「ああ、ありがとう」
そのまま、また長い立ち話を始める。
蓮見とは携帯でやりとりをしてはいるが、こうして直に会って話すのは大学に通っていた頃以来だ。透や哲、マサキはよく家のほうにまで遊びにきてくれるけれど。

「そうだ。今度、俺とあきらが住んでる家に遊びにこいよ」
「おお、いくいく」
蓮見は、喜んで住所を聞く。
「へー、けっこう近くじゃん。俺の家からチャリでいけるよ」
「大学終わった後とかでもいいから、気軽に遊びにこいよ。哲もよくくるし。他の友達もいるときもあるけど」
「夜流、高校頭よかったもんな。名門校通ってただろ。高校時代の友達?」
「ああ、まぁそんなの。哲とは中学時代からつるんでる、地元の友達だけどな」
「へー。っと、もうこんな時間だ。休憩時間終わってる、やっばい、じゃあな、夜流!」
蓮見は手をふって、店の中に戻っていった。




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