「日常」F







瑞希は、あきらと夜流が肉体関係を持っていることを知っている。
それはそうだろう。
精液でぐちゃぐちゃになったシーツを洗濯するのは夜流だったけど、二人は瑞希がいても普通にキスやディープキスをするし、いちゃつくし。
瑞希に、そのことで叱責されたことはない。
愛し合っているのであれば、仕方ないことだと思っている。
むしろ、相手が夜流でよかったとさえ彼女は思っていた。不自然な夜流とあきらの関係だけれどども、我が子が幸せならそれでいいと思う。あきらを救って守ってくれる存在がちゃんといてくれて良かったと。

「夜流くん」
起こされて、夜流は飛び起きた。
上半身裸だった。
「ぬお!す、すみません、今服きますね!」
「いいのよ。それより、あきらのことだけど」
「はい。何か?」
久しぶりに帰宅した瑞希は、あきらのことで夜流に質問があるらしい。
「あの子・・・最近、ちょっとエッチっていうか、なんか下品なことを言うようになったの。心当たり、ないかしら?ザーメンとか精液とか、チンコとか・・・・その・・・・口にするのも恥ずかしい言葉を」
夜流も、あきらとSEX中にいきなり「ザーメン子宮にちょうだい」とか言われて、苦笑いした記憶がある。
つい最近のできごとだ。
「えーと。多分、哲がもってきた・・・・男性向けのゲーム?かな?」
「あら。あの子、そんなのものに興味あったのね」
「いや、多分暇だからやってるだけだと思いますけど」

「まぁ、あきらに一度言ってくれないかしら。あんまり、そんな言葉を言わないようにって。私が注意するのも・・・その、恥ずかしくて」
ハーフの瑞希はとても綺麗な女性だ。
とても40歳とは思えない。金色に近い髪と、グレーの瞳をしている。
母親、あきらにとって祖母が、もう亡くなってはいるがドイツ人らしい。あきらの美貌も、彼女からもたらされたものだ。美しい、アンティークドールのような容姿、美少女にしか見えないその姿は、母親瑞希譲りだ。

「はぁ。なんかリリスってとこの同人ゲームがエロおもしろくてハマってるそうですけど・・・今度注意しときます」
「まぁ、あの子が好きでそういうゲームをするのも別にいいんだけれど。もっと、普通のゲームをするように言っておいてね」
「はい」
「ファイナルファンタジーとかドラゴンクエストとか興味ないのかしら?」
「あ、持ってるみたいですよ」
「あら。あの子、わりとゲーム好きなのかしら」
「見せてもらったけれど、ほとんどの機種もってて、RPGが特に好きで・・・大抵のはクリアしてるみたいです」
「あら、そうなの。まぁ、できるだけそういうゲームするようにって言っておいてね」
「はい」
「じゃあ、私は疲れたから今から眠るから。あきらが起きたら、よろしく伝えておいて」

瑞希とあきらの溝は、まだ完全に埋まったわけではない。
あきらをあきらとして認識する時もあれば、亡くなった姉のマナの変わりのように思い込みただ可愛がるだけの時もある。
なんとも人間の精神とは複雑だ。
それでも敏腕の女社長を勤めているのだから、凄いと思う。

「あきら〜」
「あっは〜ん、もうだめーん、子宮にドバドバザーメンきた、ザーメンアクメいく、アクメするよ、もうだめ!いっちゃう、ああ、もう子種いっぱいで孕んだ、奥がきゅんきゅんいってる、絶対孕んだー!ケツ穴と一緒にズボズボ犯されていっちゃうーーーーー!!」
部屋をあけると、そんな声優の喘ぎ声が聞こえてきて、夜流は固まった。
ちょっと、夜流も通常のヘテロの思考があるので、腰にきた。
「な、なにやってんだよお前」
「何って?リリスの新作ゲーム」
平気な顔で、パソコンの前でエロゲーをしているあきら。
「お前なぁ。そのゲームのたぐい、やめないか?」
「なんで?」
「瑞希さんが心配してたぞ。最近口に出すのも恥ずかしい言葉を出すって」
「あー。うん、これの影響。気をつけるから」
「プレイやめないのか?」
「これはこれで面白い。RPGにはない奥の深さがある。シナリオで泣けるときもあるし」
「そういうもんなのかよ」
「このデータとか・・・全部哲にまわしてるんだ。哲に頼まれてDLして、もったいないからプレイしてるの」

やっぱり、犯人は哲だった。

「哲、今度会ったら・・・・ぶっとばすをこえて背負い投げしてやる」

「あっは〜ん、うっふ〜ん」
夜流も、すすめられて絵が気に入ったエロゲーをしてみた。
エロすぎて、もはや笑うしかない。台詞とかエロいしグロい。はじめは腰にきたけど、あまりにもエロすぎて萎えた。ヘテロの思考がある夜流だが、あきらに欲情しまくって、もはや女では無理なのかとちょっと自分でも心配していたけど、そうでもないらしい。
でも、やっぱりあきらがいい。
あきらは、夜流を放置して、新作のエロゲーを進めていくのであった。





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