贈り物







真国にきて早、3ヶ月が経とうとしていた。夜を変わらず星嵐は真那と共にするが、子ができる気配は一向にない。

その日は、星嵐の誕生日だった。それを真那に教えると、真那は後宮でささやかな宴を催してくれた。その後宮殿でも宴が開かれ、皆侮蔑の眼差しを隠して、心から星嵐の誕生日を祝った。
どこにいっても冷ややかな眼差しで見られることにも、影口をたたかれることにももうなれた。

最初は寂しいと思っていたけれど、真那が話相手になってくれることが多くなった。
他愛ない話を二人でしあったり、真那は変わった。星嵐を攫うように連れてきて、純潔を奪った当時の冷やかな態度から見えなかった、温かみを見出せるようになった。
変わらず、星嵐は笑うことはないし、泣くことが多いけれど、一人で涙を流すよりも、真那の側で泣いて抱きしめてもらって落ち着くことが多くなった。

たくさんの贈り物が、星嵐に贈られたけれど、それに心を動かすことはあまりなかった。どれも適当に見繕ったような衣服や宝石、そんなものばかり。
ただ、真那がくれた贈り物は、星嵐の目を輝かせた。

星嵐の髪と瞳の色と同じ、水色の小鳥だった。
少し大きめの鳥かごに入れられたそれを贈られた星嵐は、真那の前で初めて心からの笑顔を見せた。

宴が終わって、二人きりになると、真那は嬉しそうに星嵐の頭をなでた。
「初めてお前の本当の笑顔を見た気がする」
「そうですか。僕はあまり・・・・笑ったりすることが、なくなりましたから。この子、名前つけていいですか?」

ピーチチチと綺麗に囀る鳥を手に止まらせて、星嵐は真那の紫の瞳を覗きこんだ。

「ああ、好きにするといい」
「じゃあ・・・・花嵐(カラン)」
「お前・・・・」
チチチと、水色の小鳥が星嵐の手から飛び立って、止まり木に止まった。
カウチに押し倒された形になる星嵐は、目を見開いて真那を見上げる。
「まだ、兄のことを愛しているのか。お前は、いつまでたっても私のものにはならないのか」
「僕は・・・・花嵐を愛しています。だって、片割れだし、僕の一番の理解者だから」
「お前はもう私のものだろう」
「それは・・・・」

逡巡する視線。紫の瞳に射抜かれて、言葉を失う。

「あっ」
唇を奪われて、いつものように囁かれる。
「子供を産むんだ。私の世継ぎを」

「あ、あっ・・・・あああ」
衣装を脱がされていき、平らな胸を何度も愛撫されて、ため息が零れ落ちた。
先端を指で何度も転がされて、舌でなぶられる。
「僕・・・・あっ」

首筋をきつく吸われて、後ろを向かされて、背骨沿いに唇を這わされる。最初の頃の行為に比べると随分と優しくなったし、愛撫が多くなった。
「あっ」
薄い夜着の下着をつけていたが、そこに手を這わされて真っ赤になった。
「濡れているぞ」
「・・・・・言わないでっ」
さっと顔を片手で覆うが、無理矢理、真那の手によって払いのけられた。

愛撫で感じ、蜜を零すように濡れてしまうようになってしまった秘所。何度、真那と体を重ねただろうか。何度その精を注がれただろうか。
もう忘れてしまった。

チチチチチ。
小鳥が囀る声が、どこか遠くなっていく。

「ああ、うあああ」
いつまで経ってもなれない、衝撃。ズクンと内部を埋め尽くされいく、凶器のような熱が星嵐を内部から犯し、そして男であったはずの星嵐を完全に女にしてしまった。
「うあっ」
びくんとしなる肢体を抱いて、真那は星嵐を揺さぶった。
最初は緩く、どんどん激しく。
宙を舞う水色の髪が、ぱさりとシーツに広がる。その螺旋を手で確かめながら、星嵐に口付けを繰り返して何度も中を抉り、体位を変えて貪る。

「やあっ」
甲高い声をあげた星嵐の、弱い箇所ばかりを攻めて、陥落させる。
「あ・・・・もっと、優しく・・・・」
星嵐は手を広げて、真那にしがみ付くと、涙を零しては熱い息をつぐ。
「優しくだな・・・」
緩やかに動いて揺さぶると、星嵐は体を巡る快感に唇を噛み締める。
「我慢するな。お前の声が聞きたい」
「あ、あああ!!!」

中で精液を受け止めて、それから星嵐は自分から真那に口付けた。

「いい子だ」
「んっ・・・・花嵐が、見てるよ・・・・」

ピーチチチチ。
二人の睦言を、水色の小鳥が見下ろしていた。
二人で湯浴みを終えると、花嵐と名づけた小鳥を籠に入れて、星嵐と真那はいつものように同じ寝台で眠る。

「お前が子を産んでくれれば・・・・・」

眠りに誘われる星嵐の耳に、そんな真那の言葉がゆっくりと浸透して沈んでいった。


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