真の心







馬車が、人通りのない林付近でとまった。

「あの?」
「降りてくださいな」
「え」
その時になって、星嵐は自分の身に危険が迫っているのを知った。
傭兵は二人とも、星嵐を獲物としてとらえていた。馬を操っていた者まで、輪になって星嵐を取り囲む。
「何を!僕を冠羅第二王子と知っての狼藉か!」

星の細工がされた短剣を引き抜く。冠羅の王宮で、一通りの剣は習っていた。王子として生活していたのだから、武術に卓越していなくてはという父の言葉通り、双子の花嵐と一緒に剣を学んだ。
だが、短剣では小さすぎる上に、星嵐の剣の腕は人並みといったところ。
見たところ、傭兵二人はかなり腕がたちそうであった。いちかばちか、星嵐は短剣で馬車を御していた者に切りかかったが、すぐに傭兵が抜いた剣によって短剣をからめとられ、短剣は遠い大地に突き刺さった。

「あ・・・・どうして・・・・どうして!?」
「菜国の王女から金貨をたっぷりもらってねぇ。冠羅の両性具有をめちゃめちゃにしてくれって」
「百合が・・・・そんなことを」
「両性具有というからどんな不気味な存在かと思ったら、菜国の王女より美しい儚い美少女じゃないか!こりゃ得したなぁ!」
「全くだ」
「こないで!僕に手を出したら、自害します!」

「へぇ、自害できるもんならしてみな」
「いやあああああああ!!!」

舌を噛み切ろうと思っても、そんな勇気がやはり足りなかった。どうしてこんなに中途半端なんだろう、僕は。

「いやああああああ!!!」
衣服を剣で切り刻まれて、下着姿にされた。三人の男に押し倒されて、真っ白な雪のような肌を舐められ、指で乱暴に弄られて吐き気がした。
「やめてえええ!!」
「おい、俺からでいいか?」
「ち、仕方ないな」

少女の花弁を指で擦り挙げた傭兵の一人が、中の具合を確かめるように指を乱暴につっこんでくる。もう一人の男は後ろの蕾を濡らすことなく指を突き入れた。

「俺はしゃぶってもらおうか」

「い、あ・・・・あああ、いやああああああ!!!助けて、陛下ーーー!!!」

同じ男という生き物に体を好き勝手にされているのに、本当に死んでしまいたい、今すぐに。

男たちが一物を取り出したとき、星嵐は陽緋に願った。陛下に助けてもらいたいと。
そんなこと、かなうはずがないのに。
でも、一人の男が断末魔の悲鳴をあげる。それに連鎖して、二人の男が剣で切り捨てられた。
「いやああああ、触らないで、いやあああああ!!!」

「落ち着け!私だ、星嵐!!!」

「いやああああああ!!!」

「星嵐!!」

漂う錆びた鉄の匂い。血の匂いだ、これは。
星嵐は、金の髪をした美青年に抱きしめられて唇を奪われた。コクリと喉がなる。甘い薔薇水が喉を通っていく。

「あ・・・・ゆ、め?」

「違う。私だ、真那だ。陽緋が私の前に現れて、お前が危ないと教えてくれたのだ。間に合ってよかった!本当によかった・・・・・私の星嵐。やはり無理だ。私にはお前が必要なんだ。冠羅に戻らないでくれ。お前を正妃にしたい。子供なんてできなくてもいい。私を捨てないでくれ!」

「陛下・・・・・」

紫の瞳を伏せながら、必死に星嵐にしがみつく真那を、星嵐は受け入れた。
星嵐の胸の奥で、陽緋が言葉をかけてくれた。

(良かったな)

「陽緋・・・・ありがとう」

星嵐を救ってくれたのは陽緋であり、そして陽緋の教えを受けて一目散に駆けつけた真那であった。

「僕も・・・・言っていいですか。愛してください。嘘じゃなくって。僕を、愛してください」
「愛する。真国の王として誓おう。お前を一生愛すると」
「陛下・・・・」



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