愛し合う二人







菜国との戦争はなんとか回避されることになった。
王自らが指揮をとり、軍を動かした結果であった。そして、やっと後宮のいつもの星嵐の部屋に戻ってくることができた真那は、星嵐を抱きしめると耳元で暑く囁いた。

「正妃になってくれ。愛している」
「陛下・・・・僕、両性です。それでもいいの?」
「構わない。子供が生まれなくてもいい。俺の伴侶になってくれ」
「陛下」
「答えは?」

「答えは・・・・」
「体に聞くとしよう」

強く星嵐をかき抱いた。胸の中に収まる星嵐は震えていた。涙をたくさん零している。
本当に、星嵐はよくなく子だと思った。
月下美人のように儚い。どの寵姫よりも愛しい存在。か弱くもあるが、強くもある。そう、百合に立ち向かったように。
傾国の相。確かに、星嵐は傾国の美姫だろう。だが、それに溺れるだけの真那ではない。

「お前を愛している」
「僕、も・・・・・・」
おずおずと背に手を回してくる星嵐がいとおしい。
「お前さえ側にいてくれれればもう、何もいらない」

強く抱きしめられて、口付けられる。

「頼むから、私の側にいてくれ。それ以外にはもう望まないから」
「陛下」
「真那でいい」
「真那・・・・愛して、います」

太陽の女神、陽緋が微笑んだ気がした。

「冠羅第二王子でよければ」
星嵐は、悪戯げにクスリと笑う。もう、心の傷は大分癒えているようだ。
「王子でも構わないさ」

優しい真那の抱擁と、口付けに、これが現実であるのかも疑わしくなったが、心の中で陽緋が語ってくれた。

(これは真実だよ、太陽の申し子よ)

「ありがとう・・・・・」
「どうした?」
「ううん」
真那の胸に顔を埋めて、星嵐は首を振って涙を流した。
「星嵐はよく泣く子だな」
「あなたのせいだよ」
「そうだな。全部私のせいだな。冠羅から連れ去ったのも、他の寵姫たちの嫌がらせに気付いてやれなかったのも、百合の自作に気付かずお前を罰したのも、お前が子を流してしまったのも全部私のせいだ」
「もう、いいよ」

ゆるりと、星嵐は首を振った。
そして、自分から初めて真那を誘った。

「抱いて、ください。両性具有ですけれど」
「太陽の子だ。私には勿体無いくらいだ」
真那は星嵐を抱き上げると、そっと寝台に横たえた。
そして、何度も耳元で愛していると繰り返して優しく口付けた。

「んっ」
首筋をきつく吸われて、甘い声を星嵐が上げる。
「もっと、声をあげてくれ」
「ああっ」
平坦な胸を何度も愛撫する唇と手のひら。頬を挟みこむ真那の手のひらに、自分の手のひらを重ねて、星嵐は目をつぶったあと、オパール色を秘めた水色の瞳で真那の紫の瞳を見つめた。

「僕は、真那のものでいいから。愛して・・・・」
「私と一緒に人生を歩んでくれ。最後まで」
「約束できる?」
「約束する。他に妃は作らない。愛妾も国に戻す」
「うん・・・・」

星嵐は、自分から足を開いて真那を受け入れた。


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