二人の間に生まれたという、まだ生まれて間もない子の花來(カライ)にもあわせてもらった。 花來は、凍嵐の夫の第一候補である。 真国は、冠羅と違って、双子での間での結婚は禁止されている。それもそうだろう。冠羅が特殊すぎるのだ。冠羅では、血がつながっていても、双子であれば結婚が許されている。 それは同性でもだ。 真国も同性結婚は許してはいるが、冠羅ほど緩やかではない。 冠羅は、本当に民に優しい国だと思う。 金がとれるだけの小国だが、福祉制度は整っているし、病院などは無料だ。 よい国に生まれたと、星嵐は思う。 「あのね、花來、二人の子なんだけど、大きくなったらお嫁さんとるよね。よければ、うちの凍嵐なんてどうかな」 「ぶっ!?」 晩餐の宴で、王太子である花嵐は、スープを器官につまらせて咳き込んだ。 「あらまぁ、あなた、しっかりしてくださいまし」 妻の金蘭が、優しく花嵐の背中をなでる。 ああ、いいなぁ。なんかこういうの。 「お、お前の子の凍嵐は両性だろう!」 「うん。でも両性の姫だよ。姫として育ててるから。どうせお嫁にいかせるなら、両性を大切にしてくれる冠羅がいいなって思って。兄上の子の花來なら、信頼できるし」 「あのな、星嵐。まだ花來は生まれて一年だ!」 「うん!でも、視野に入れといてね!」 「げふごふ・・・・」 こうやって、宴の席で父や母と一緒に、兄とも一緒に談笑するのは本当に4年ぶりだ。 懐かしい冠羅。愛しい、僕が生まれた国。 「僕、もう少しここにいる」 父と母と挨拶をしてから、いざ真国への出立の日がきても、星嵐は真国へ帰るのを先延ばしにした。 せっかくの里帰りなのだ。 もう少しいてもいいよね、真那? もう少しだけ・・・・。 柔らかな真綿で包まれたような環境に浸って、星嵐は幸せに酔いしれる。 冠羅に戻れてよかった。冠羅がこんなにも愛しい。 父上も母上も健やかだし、兄上には妻も子もできた。 「ねぇ、花嵐」 「なんだ、星嵐」 「今でも僕のこと、愛してる?」 本当は、それは聞いてはいけない言葉。 「愛してるよ。今でも」 星嵐と花嵐は、もともと双子で、将来結婚を誓い合った仲であり、愛し合っていた。それを、真国の真那が引き裂いた。 「僕も、愛してるよ」 唇を重ねると、扉が突然開かれるのが同時であった。 「え、何!?」 「何者だ!」 「星嵐。帰るぞ」 「ええ、真那?うそ、なんでここにいるの!」 王の衣装も眩いばかりの真那が、冠羅の星嵐の父と母に謁見を行い、それから二人がいるであろう場所を教えてくれたのだ。 「それはこっちのせりふだ。里帰りするのはいいが、いつまでここにいるつもりだ。お前は真国の正妃なのだぞ。自分の立場をわきまえよ」 「うん・・・」 連れ去られていくように、星嵐は真那に従い、花嵐に別れも言えずに、その妻金蘭にも、父と母にも別れをいえずに、そのまま馬車に乗せられた。 「お前は私の正妃だ。兄をまだ愛しているのかもしれないが、それは私が許さない」 「真那・・・・・」 真那は怒っていた。 こんなふうにピリピリした真那を見るのは久しぶりだ。 少し怖い。 真那は嫉妬していた。そう、星嵐の兄の花嵐に。 口付け会う場面にまで出くわして、嫉妬の炎は揺らぎ続けた。 NEXT |