里帰り2







二人の間に生まれたという、まだ生まれて間もない子の花來(カライ)にもあわせてもらった。
花來は、凍嵐の夫の第一候補である。
真国は、冠羅と違って、双子での間での結婚は禁止されている。それもそうだろう。冠羅が特殊すぎるのだ。冠羅では、血がつながっていても、双子であれば結婚が許されている。
それは同性でもだ。
真国も同性結婚は許してはいるが、冠羅ほど緩やかではない。
冠羅は、本当に民に優しい国だと思う。

金がとれるだけの小国だが、福祉制度は整っているし、病院などは無料だ。
よい国に生まれたと、星嵐は思う。

「あのね、花來、二人の子なんだけど、大きくなったらお嫁さんとるよね。よければ、うちの凍嵐なんてどうかな」
「ぶっ!?」
晩餐の宴で、王太子である花嵐は、スープを器官につまらせて咳き込んだ。
「あらまぁ、あなた、しっかりしてくださいまし」
妻の金蘭が、優しく花嵐の背中をなでる。

ああ、いいなぁ。なんかこういうの。

「お、お前の子の凍嵐は両性だろう!」
「うん。でも両性の姫だよ。姫として育ててるから。どうせお嫁にいかせるなら、両性を大切にしてくれる冠羅がいいなって思って。兄上の子の花來なら、信頼できるし」
「あのな、星嵐。まだ花來は生まれて一年だ!」
「うん!でも、視野に入れといてね!」
「げふごふ・・・・」
こうやって、宴の席で父や母と一緒に、兄とも一緒に談笑するのは本当に4年ぶりだ。
懐かしい冠羅。愛しい、僕が生まれた国。

「僕、もう少しここにいる」
父と母と挨拶をしてから、いざ真国への出立の日がきても、星嵐は真国へ帰るのを先延ばしにした。
せっかくの里帰りなのだ。
もう少しいてもいいよね、真那?
もう少しだけ・・・・。

柔らかな真綿で包まれたような環境に浸って、星嵐は幸せに酔いしれる。
冠羅に戻れてよかった。冠羅がこんなにも愛しい。
父上も母上も健やかだし、兄上には妻も子もできた。

「ねぇ、花嵐」
「なんだ、星嵐」
「今でも僕のこと、愛してる?」
本当は、それは聞いてはいけない言葉。
「愛してるよ。今でも」
星嵐と花嵐は、もともと双子で、将来結婚を誓い合った仲であり、愛し合っていた。それを、真国の真那が引き裂いた。

「僕も、愛してるよ」
唇を重ねると、扉が突然開かれるのが同時であった。

「え、何!?」
「何者だ!」
「星嵐。帰るぞ」
「ええ、真那?うそ、なんでここにいるの!」
王の衣装も眩いばかりの真那が、冠羅の星嵐の父と母に謁見を行い、それから二人がいるであろう場所を教えてくれたのだ。
「それはこっちのせりふだ。里帰りするのはいいが、いつまでここにいるつもりだ。お前は真国の正妃なのだぞ。自分の立場をわきまえよ」
「うん・・・」
連れ去られていくように、星嵐は真那に従い、花嵐に別れも言えずに、その妻金蘭にも、父と母にも別れをいえずに、そのまま馬車に乗せられた。
「お前は私の正妃だ。兄をまだ愛しているのかもしれないが、それは私が許さない」
「真那・・・・・」
真那は怒っていた。
こんなふうにピリピリした真那を見るのは久しぶりだ。
少し怖い。

真那は嫉妬していた。そう、星嵐の兄の花嵐に。
口付け会う場面にまで出くわして、嫉妬の炎は揺らぎ続けた。


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