雪月の花に散りたもうD







許されるなら・・・・・彼だけに、愛されたい。彼だけに。
他には何も望まないから。

寝台に寝かせられて、白桜の体が強張った。
こうして、彼に触れられるのは、初めてだった。何度も一緒に廓を出て、馬に乗せられて少し遠出をしたり、違う街に連れて行ってもらったりしたことはあったし、同じ宿に泊まったことだってある。
でも、真麻がこんな意図で、白桜に触れてくるのは初めて。

水揚げ。

苦界の世界では、初めて体を開くことをそういう。
そこから、年季明けか落籍されるまで、体を売り続けるのだ。生きて帰ってこない場合もある。性病にかかったりと、20代前半で死ぬ遊女や十代で死ぬ色子だっている。何かあれば折檻されて。逃げることもできない。故に人は、この世界を苦界という。

「声、我慢するなよ」
「我慢してやる」
「バカだな」
金色の短い髪が、胸をくすぐった。
平らな胸を愛撫する指。
何度もラインをなでて、行き来する指に、天井を見上げていた白桜は目を落とす。
「くすぐったい」
「そりゃないだろ」
苦笑が耳に混じった。
「んあっ・・・・・」
濡れた音と一緒に、唇を重ねられてそのまま舌を入れられて、深く口付けを繰り返される。
「ん・・・・」
「そう、その調子」
浅く呼吸する胸をなでられると、全身に電流が走ったかのような甘い衝撃が流れる。
「んっ」
唇が胸の先端を口に含み、飴のようになめ転がすのが我慢できなくて、声がもれた。
「ん・・・・」

その手が、指が、唇が、舌が、どんどんと下方へ。いらぬ衣はすべて取り去られて、少しだけ灯った明かりの下に、全裸をさらしてしまう。

ほのかに色づいて、まるで桜の花弁のよう。

「ああっ」
びくっと、白桜の体が揺れる。
秘所をに指を入れられたかと思うと、そのままぐっと中で曲げられた。感じたこともない痺れが全身を伝う。
「やめっ・・・や、や」
「やめない」
「やあっ」
膝を割られて、逃げるに逃げられない。ずり上がりそうな体を組み敷かれる。
ああ、彼は男なんだと、思い知らされる。
両性の、女より細い肢体ではどうすることもできない。

「んう」
秘所を舌が這う感触に、白桜は、シーツを握っていた右手を離して、自分の指を噛んだ。次に男性のものを口に含まれて、言葉が一瞬止まる。口からは意味不明な喘ぎ声が艶と一緒にでてくる。
そのまま、吐性するまでしつこく愛撫されて、はじめて男としていった。
「あーーーー、やああああ!」
頭が真っ白になった。でも、まだ終わらない。
「手、背中に回して」
「ああっ」
秘所が濡れた音をたて、舌でえぐられた。そして舌が引き抜かれたのと同時に、引き裂かれた。
文字通り。
「あああああ!!!」
体が引き裂かれるような痛み。
「あああ、やだああああ!!」
「少し、我慢して」
「んー、や、や、ああ!!」
白桜を追いやるように、少しだけ突き上げると、白桜は薄紅の瞳をうっすらとあけて、涙を零しながらしっかりと真麻の背中にしがみついて、爪を食い込ませた。
「そう、大丈夫。俺はここいるから」
「んー!!」

体を揺さぶられて、白桜は長い桜色の髪を宙に舞わせる。
「あ、あ、やっ」
足をもちあげられて、角度を変えて突き上げられているたびに、全身にしびれに似た感覚が回ってくる。
「ん、ん、やっ。や・・・・」
ズズ、ズチュリと、濡れた音が耳を打つのが恥ずかしい。
「あうっ!」

びくん。

足がシーツを蹴った。
弓なりにしなる体を抱きとめて、真麻は白桜の指に指を絡めた。

「あーーー、あーーー、やっ」
「いやって、言わないでくれ」
「やっ・・・・んん、やだっ」
寝台がギシギシ揺れる。
涙が止まらない。飲み込みきれなかった唾液が顎を伝って、銀色に光った。
「なぁ、嫌がらないでくれ・・・・お願いだ」
ズッズッと、激しく挿入を繰り返される。処女を失ったのに、血は出なかった。すでに、処女の血は以前の男に指をいれられたことで、薄い膜はあっけなく消えてしまった後だ。

「やめ、や・・・・・・」
「やめない」
「あ、あ・・・・・・・真麻ぁ」
「やっと、名前呼んでくれた」
甘えたような、白桜の澄んだ声に、一層真麻の動きが激しくなった。

「ああ!」
びくんと、白桜が反応する。
その中で、真麻は果てた。
子種を、白桜の花弁の奥にぶちまけて。同時に、真麻は立ち上がった白桜のものを指で扱ってゆく。
そのまま、白桜は果てて、射精においやられる。
真っ白になってゆく中、二人は何度も口付けを交わした。




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