永遠の絆「愛しているから愛さない」







「ヴェーダ!!ああ、何故だヴェーダ!!」
ヴェーダとのリンクが途切れたティエリアは、情緒不安定になっていた。
ロックオンが傍にいても、終始ヴェーダと口にする。

「お前さんは・・・・これから、ヴェーダなしで歩いていくのさ。俺と同じように、一人の人間として」
「一人の・・・・人間として」
展望台で、星を見ながらロックオンが言った言葉は、深くティエリアの中に浸透していく。
人間として、歩いていく。
ロックオンと。他の仲間と。

「僕は、人間になれたかな?」
「ああ、もう立派な人間だ」
二人は、歩きだす。人間として、そしてガンダムマイスターとして。

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ティエリアを庇ったロックオンは、右目を失った。
そして、ショックのあまりティエリアは壊れた。自我が完全に崩壊したのだ。
「手の施しようがないの。処分するしか」
ミス・スメラギの言葉を、ロックオンは冷静に聞いていた。
量産型ティエリア。すでに、今のティエリアは二体目である。一度目に完全に壊れたティエリアは処分され、新しいティエリアがティエリア・アーデとなった。

「俺の愛がお前を壊した・・・・ごめんな、ティエリア」
機能を停止したティエリアの、石榴の瞳をロックオンはそっと閉じる。
ポタポタと、ティエリアの白皙の頬を、ロックオンの隻眼の涙が伝う。
「こんなに愛してるのに・・・・俺は、お前を守ってやれない。お前は壊れてしまう。なんでだ。なぁ、なんでだ!!」
もう、言葉も返してくれない、微笑んでもくれない人工アンドロイドとの愛の結末に、ロックオンは悔恨の涙を流し続けた。
ただ、傍にいれるだけでよかった。愛し合えれば。
でも、その愛がティエリアを壊していくのだ。ティエリアにとって、愛という感情は凶器。
受け入れられるようにプログラムされていないのだ。
凶器はティエリアの脳を傷つけ、記憶回路をショートさせる。
ロックオンが死んだと思った瞬間、ティエリアは記憶回路をショートさせ、壊れ、崩壊した。

愛し合うことが罪だというのか。
ティエリアは何もしていないのに。
人間ではないから、罰せられるというのか。
何故だ。何故、ティエリアだけが。

「罰は、俺にもきたよ、ティエリア。右目はもう再生させない」
動かないティエリアの体を抱いて何時間たっただろうか。
茫然自失状態のロックオンから、誰もティエリアの壊れた亡骸を取り上げることはできなかった。ロックオンは、ずっとずっと、ティエリアを抱きしめて。
「ティエリア、愛してるよ」

その愛は、まるで狂気。
愛し合えるはずの二人は、決して結ばれない。
報いは、ティエリアにもロックオンにも訪れた。
罰は下された。
ティエリアは壊れた。そして、ロックオンの利き目は失われた。

誰よりも美しく、無垢で繊細なティエリア。
あの笑顔は、もう二度と戻らない。
ロックオンは、決めた。もう二度と、ティエリアを愛さないと。
愛しているからこそ、愛さない。
ティエリアを壊さないために。
ティエリアが無事に存在できるように。愛しているからこそ愛さない。
「もう・・・・俺は、お前を愛さない。愛しているから、愛さない。お前は愛で壊れてしまう。だから・・・愛さない。ティエリア・・・愛してるよ。お前に愛を囁くのも、これが最後だ」

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