この閉ざされた世界で「中性のティエリア、傾国の神の子」








「あかり、消して・・・・」
「あ、ああ・・・・」
衣服を脱がすと、はっきりと分かった。
この少女は、少女ではない。そう、「少女」に似せた違うもの。
胸の膨らみは、作り物だ。そんな風に、衣服が作られていたのだ。胸がないわけではないが、本当に僅かだけ。
いくら14歳でも、これは発育不良・・・・。
「お前、男の子?あったー、こりゃとんだどじ踏まされたなぁ。陰間茶屋に売るしかねーか・・・・」
「ち、がう・・・・・」
口ごもるように、ティエリアは首をかすかに振った。
「だって、胸ないだろ。いくら細くても、14なら・・・・・え」
下着を脱がせると、少年ではないのがはっきりと分かった。
下肢に、少年にあるべきはずの男性の象徴をもたず、茂みもないその場所には女とは少し違うが、よく確かめれば確かに秘所があった。
「お前・・・・・中性?」
「うん・・・・隠してた。ライルにも、ずっと・・・・・」

この世界で中性はごく稀にしか生まれない。
男でも、女でもない性。
両性具有も稀だが、それよりもさらに稀なもの。それが中性。中性が産んだ子は、中性になる確立が高い。
「お上に・・・・」
中性は、生まれるとお上に献上される。
「いや、やめて!」
ティエリアは悲鳴をあげた。
お上は代々、中性を愛でる歴史をもつ。
お上、皇帝に渡された中性は、死ぬまで玩具にされ、そして短い一生を終える。中性は、神の子とも歌われるだけあって、奇跡の存在。
寿命が短い場合がほとんど。
しかも、特種だ。はじめてを、つまりは女性にあたる処女を愛した者でない者に汚された中性は、拒否反応をおこして、短い一生を終える。元々、40歳までも生きられないのに、拒否反応で20代半ばで死んでしまう。
それでもお上は中性を愛してやまない。
中性には、それだけの魅力があるのだ。両性具有もそうだが、中性はとても美しい。あまりの美しさに、傾国、とまで呼ばれる存在。それに狂ったお上も歴史に何人もいる。
今のお上には、二人の中性が献上されている。一人は正式なお上の正妻となった。
中性は、場合によっては子をなすことがある。お上の正妻となった中性は、子を産んだ。幸いにも子は男児であった。次代のお上に献上される危険はなくなった。子は次のお上とされ大切に育てられている。
正妻は、今のお上を愛しお上もまた正妻を愛し、ずっと手を出さなかった。歴代のお上はすぐに中性に手を出した。正妻となったその中性は周りに高名な医師をつけさせられ、法王に洗礼を受けたせいで、寿命は極めて長いとされている。
名前はなんといったか・・・・リフェラ?リフェラ・アーデ。
アーデ家は、代々中性が生まれる一族として有名だ。お上はアーデ家を抱え、一族に中性が生まれないかたえず調べているそうだ。
それ故に、お上に献上されることを嫌うアーデ家は、中性の子が生まれると早々に子を秘密裏に養子に出す場合があるらしい。一族に伝わる魔法で、性別を一時だけ男女のどちらかにしてしまうのだ。

「お前・・・・名前は?」
「ティエリア・リベラ・エルロンス」
「違う。本当の、名前・・・・お前・・・・お上の正妻のリフェラ様に、似てるんだ。そう、社交界でもそれで余計に有名になったんだったな。お上の中性の再臨だって。みんなリフェラ様に憧れてるからな」
「・・・・・・・・ティエリア・・・・・アーデ・・・・」
「やっぱり。アーデ家の子か・・・・」
「お上にいうの?でも、吉原にも昔、中性がいたって・・・・。吉原に渡った中性は、お上でも手出しできないって聞いた。それが吉原の掟。もともと、吉原をつくったのもお上。ねぇ、私をお上に引き渡さないで!いや、いや!吉原にいくよりもっと嫌!お上のことだから、正妻がいるからきっと弟に譲ってしまう。お上の弟はとても残酷な方だと聞きました。お上に献上されたもう一人の中性は、弟君のせいで死んだと・・・たくさんの男たちに中性を輪姦させたり、獣姦させてそれを見世物にしていたとも聞きました・・・・・そんなの嫌・・・・・吉原で男に抱かれているほうがまだまし・・・ねぇ、ねぇ・・・・・お願い、お上に献上しないで・・・・それを恐れて、私の本当の父と母はお父様とお母様の養子にしてくださったのです。お願いです」
震えながら抱きついてくるティエリアは、ぞっとするほど美しかった。

傾国。
頷ける気がした。確かに、この美貌は傾国だ。

「渡さない。お前は、吉原に売る。俺が、守るよ。吉原にいっても、俺が守ってやる。男たちに身を売ることも、中性ならさせないだろう。中性なら、いるだけで金になる。男に酒をついだり、踊ったり・・・それだけすればいいはずだ」
「本当に?身を、売らなくて・・・・・いいの?体を売らなくて・・・・」
「女衒の俺がいうんだから本当だ。吉原で生きてきた俺も、吉原での中性の扱いは誰よりも知ってる。花魁になるんだ。誰よりも一番の花魁に。男たちの話をきき、そして男たちに女とが違った形、接することで夢を売る。中性は、神の子だ。法王でさえ虜にする中性の身を、本来お上に捧げるべきの中性を吉原でその身を売り買いさせることは固く法律で禁止されている。昔いた中性の花魁もそうだったからな」
「良かった・・・・でも・・・・・でも・・・・禁止、されていても、やっぱり、いつか汚されるんでしょう?」
「まぁなぁ。無理やりって形で、廓の主人が手を出すらしい。廓の持ち物だからな。中性とはいえ」
「だったら、やっぱり、抱いてください・・・・いつか汚されるなら、私、あなたがいい。あなたに、捧げます」
「おいおい、まじかよ。俺に、神の子を抱けっていうのかよ」
「私を守ってくれるというのは、嘘なのですか」
「いや、守るよ。俺は嘘はいわねぇ・・・ったく、とんだいわくもの売られたもんだなぁ」
ニールは、上の服を脱ぐと、ティエリアの唇にキスをした。
優しく。


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