もう一度愛せるなら「プランNO1230」







コポポポ。
金色の羊水の中で、アニュー・リターナと全く変わらぬ容姿をしたイノベイターは眠っていた。

「アニュー!!」
ライルが、リジェネの静止も無視して、アニューのカプセルに張り付いた。

「アニュー、アニュー」
名前を呼ぶと、アニューと同じ姿をしたイノベイターは、目を薄っすらとあけた。
石榴の色の瞳。漂う薄い紫の髪。どこからどうみても、ライルが心から愛した女性、アニューだ。

「僕が・・・・していた実験は、イノベイターを人間にすること。ニールのときとは逆だね。彼女の体の構造はほとんど人間だ。もう、イノベイターではない」

アニューと同じ・・・いや、アニューは石榴色の瞳を見開き、カプセルごしにライルとキスをする。
「アニュー、愛している」
ライルは、エメラルドの瞳からいくつもの涙を零していた。

リジェネが、スイッチを押すと、ザァァァと、金色の羊水が流れ出る。
アニューが、ゆっくりとリジェネの傍に立つ。
裸であるアニューを包むように、ティエリアはアニューの体と髪をふき、バスローブを着せた。

「ア、ニュー?」
アニューは怯えた様子で、リジェネの背後に隠れた。
「あなたは誰?」

その言葉に、打ちのめされた。
そう、このアニューは、ライルが愛したアニューではないのだ。
そう、リジェネも言っていたではないか。

でも、それでも・・・。
もう一度愛せるなら。

「俺は、ライル・ディランディ。アニュー、お前を世界で一番愛する男だよ」
「私は・・・アニューという、名前なの?」
アニューは困惑しているようだった。

近寄ってくるライルに震えている。
ライルは、それでも・・・アニューを捕まえると、抱きしめた。

「もう、離さないから・・・・」
「あなたは、誰?」

リジェネが天井を仰いだ。

目覚めたばかりのアニューに、ライルは深くキスをした。
「いやっ!」
アニューは暴れて、ライルを引っ掻くと、リジェネに助けを求めた。
ライルは、絶望的に、床に膝をつく。

「プランNO1230って・・・・ちょっと、ティエリア!」
リジェネの静止も無視して、ティエリアはアニューを別のカプセルに入れると、隣にティエリアも入り、プランNO1230を起動する。
「こうなると思ったんだ・・・だから、ティエリアを連れてきたくなかったんだ!」
リジェネが、カプセルの中に入ったティエリアのカプセルを叩く。

「プランNO1230って、なんだ?」
ニールが聞くと、毒を吐くように、リジェネがきっとニールを睨む。
「精神存在となって、相手の心にもぐりこむ・・・危険なプランだ。失敗すれば、ティエリアの心が壊れる」
「なんだって!ティエリア!!」
「もう遅いよ。発動してしまっている。今は、待つしかない」

ニールもリジェネも、そしてライルもただ祈るしかなかった。



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