私立ガンダム学園U1







「おはよう〜」
「おはよう〜〜」
今日もまた、私立ガンダム学園の平凡な一日が始まる。
校門のところで生徒の服装チェックをしているのは、校内きっての変態として名高いグラハム先生だ。なぜか、毎日校門の前にたって生徒の服装チェックをしている。
私立ガンダム学園の制服は男女共にブレザーである。
指導員でもないのに、今日もグラハム先生は熱が入っている。
「こらそこの女子、スカートが短いぞ!」
普通に膝上の長さのスカートをはいていた女子が注意を受ける。女子は、グラハム先生を無視して登校する。だって、もとからスカートの長さは膝上で、女子は何も違反などおこしていないのだ。
グラハム先生にとって、女子とはただの煩わしい生徒である。グラハム先生の生徒は、グラハム先生の中で男子生徒のみとなっていた。
生粋の変態である。

「おお、そこの君、その上着いかしているな。だが髪が長いな。男子の長髪は禁止ではないが、結ぶが何かすべきだ。私がポニーテールにしてあげよう」
見目のいい男子生徒にいちゃもんをつけて、さっと上着の内側からくしと髪ゴムを取り出す。
「ぎゃあああああああ」
餌食になった男子生徒は、グラハム先生のセクハラを受けながら髪をポニーテールにされた。

私立ガンダム学園の規則は緩い。髪を長髪にするのも自由だし、染めるのも自由だ。アクセサリーをつけても構わない。上着はこれまで決まっておらず、生徒は寒い時期になると好みの上着を着て登校する。
それに、本当の生活指導のビリー先生が、せめて上着は統一すべきだとの意見をだし、一応は専用のコートがあるのだが、他のコートなどを着ても自由なので、お洒落好きな生徒は好みの上着を着て登校していた。
それでも、半数はちゃんと指定のコートを着てくるあたり、それは指定のコートが専門のデザイナーの手によってデザインされたとてもお洒落なものだからだろう。

校内に、超高級車が入ってくる。億単位のドイツ製の高級車だ。
「学園につきました、お嬢様、お坊ちゃま」
運転手が、ドアを恭しく開ける。
「ご苦労さま」
リジェネは、運転手の手に手を置いて、車から降りた。
「ほら、ティエリア。いつまで寝てるの。行くよ」
「んー」
車内のソファベッドでティエリアはジャボテンダーを抱いたまま寝ている。
「ふぁぁぁぁ」
ティエリアは大きな欠伸をした後、起き上がった。制服は上は女子のブレザーだが、下は紺の半ズボンだ。流石にこれは思い切り校則違反だが、誰も注意する者はいない。
ティエリアとリジェネの両親は学園に寄付をしまくっていて、二人は特別なのだ。
リジェネも規定のブレザーを改造しまくっており、これも校則違反だが、やはり注意する者はいない。校長のイオリアシュヘンベルグがそのように取り計らっているせいだろう。
「お嬢様、おぐしが乱れております」
いつも一緒の車にのってくるメイドが、ティエリアの髪をすいて、それから綺麗にツインテールに結った後、シルクでできた黒のリボンで結ぶ。
「ありがとう、メイドさん。行くよ、ジャボテンダーさん」
ティエリアは鞄を持った反対の手にジャボテンダーを抱える。

もう一台の高級車が校内に入ってきた。
「つきました」
「ありがとう」
「ありがとさん」
「サンキュー」
ドアが開き、施設暮らしだったニールとライル、それに一人暮らしだった刹那が出てくる。三人は、ティエリアとリジェネの親に気に入られ、養子ではないが一緒の屋敷に住んでいた。といっても、ゲストなので少し離れた別館に住んでいたが。
食事を取るときなどは一緒だが、普段生活している時は別々だ。それでもティエリアやリジェネ、その両親が別館に頻繁に訪れるため、もはや家族の一員といっても差し支えはないだろう。
「おはよう、みんな」
リジェネが朝の挨拶をする。
「おはよう」
「おはよー」
「おはよ」
刹那、ライル、ニールはそれぞれ朝の挨拶をして、鞄をもって登校する。

「おはよう、ニール」
「おはよ、ティエリア」
ティエリアはメイドに綺麗に髪を結われ、靴をはかされてジャボテンダーと鞄を持ったままニールの傍に寄ってきた。

「ふふふふ、今日もきたな少年!」
グラハム先生は、早速、刹那を追い掛け回している。
「美少年たちもおはよう!」
グラハム先生は、八ミリビデオを取り出して、ガンダムマイスターである彼らを撮影をしはじめた。
「みんなおはよー」
そこへ、何も知らないアレルヤが登校してきた。アレルヤは普通に家庭を持っており、電車通学だ。

「メイド、例のものを」
リジェネが、完全に登校するまで屋敷に帰ることのないメイドに手を差し出す。
「はい、坊ちゃま」
メイドが渡したのは、釘バッドだった。
「僕のティエリアを邪な目で見るな、この変態がああああああああ!!!」
リジェネは、華麗にグラハム先生を釘バットで打った。
「ぐはああ、愛が痛いいいいいいいいいい!!」
グラハム先生は、野球ボールのように吹っ飛んでいった。血を垂れ流しながら。全部鼻血だったけれど。
残った八ミリビデオは、刹那、ライル、ニールがぐしゃぐしゃに蹴って破壊する。アレルヤも混じっている。

「こら、君たち。もう少し大人しく登校しなさい。あれでも、グラハム先生はちゃんとしたこの学園の教師の一人だ。打つなら、釘バッドではなく普通の金属製のバットにしなさい」
本当の生活指導であるビリー先生が、注意してきた。それって、あんまり変わってないのでは。
ビリー先生とグラハム先生は、なぜか親友である。しかし、ビリー先生がグラハム先生を庇ったことなど一度もなかった。
皆はビリー先生に謝って、それから各自下駄箱にいく。


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