血と聖水V「水銀再び」







「血と聖水の名においてアーメン!」
ティエリアは銀の銃を発砲する。特殊な銀の銃弾が放たれる。
「にゃあ、主、上だにゃ!」
氷の精霊フェンリルが、ティエリアの敵の行方を教える。
「血と聖水の名において・・・・いでよ、氷の精霊アイシクル!」
ティエリアは自分の血を流し、それで円陣をかくと精霊をさらに召還した。
コオオオオオ。

大気が凍てつく。
フェンリルよりもさらに上位の氷の精霊アイシクル。
姿は氷でできたアイスランスをもったヴァルキリー。神話の戦乙女だ。
「主よ。命令を」
「凍てつくせ、アイシクル!」
「主の名において・・・・汝を抹殺せん」

「三つ星如きのヴァンパイアハンター風情に殺される私ではないわ!」
今戦っている、ティエリアの敵はロードヴァンパイア。
ティエリア一人で倒せる相手ではない。

ハンター協会は、それを承知でティエリアを使命した。なぜなら、ティエリアにはティエリアのマスターであるヴァンパイアマスター、水銀のヴァンパイアマスターのロックオンがパートナーとしてついているからだ。
ロックオンはヴァンピールを殲滅していた。うじゃうじゃとわいてくるヴァンピールどもの首と胴を、血でできた刃で切り離し、炎のブレスで燃やしつくす。

「ちい!」
ロードヴァンパイアが飛び退る。
そこに、ティエリアの召還したアイシクルが氷のランスをくるくるとまわして、飛び込んでいった。
「凍てつけ!」
地面が凍る。
大気中の水分が反応して、ダイヤモンドダストが降り注ぐ。
足を凍らせられたロードヴァンパイア。
身動きを封じられた。
蝙蝠になって逃げようとすると、アイシクルが槍を繰り出してくる。
「くそがああ!!」
ロードヴァンパイアは血の渦となった。
「主!」
「主!」
フェンリルとアイシクルの悲鳴が重なった。

血の本流となったロードヴァンパイアはティエリアに襲い掛かる。

「ヘルブレス!」
ロックオンが、にっと笑った。
絶対零度のブレスを受けて、血の本流となったまま、ロードヴァンパイアは空中で凝固して動かなくなった。
そのまま、サラサラと灰になっていく。

「ありがとう、ロックオン」
「なーに」
「主、上!」
「ち、もう一匹居やがったか」
ロックオンが跳躍する。
そのヴァンパイアも血の波となり、ロックオンの攻撃を避けるとそのままティエリアの体に纏いつき、体の中へと進入する。

「うあああああああああ」

ティエリアの悲鳴が空を切る。
「アイシクル!ティエリアの右肺を貫け!」
「了解した」
ロックオンの命令を受けて、アイシクルは氷のランスでティエリアの右の肺を突き刺した。
そこから、ビキビキとティエリアが凍りついていく。
ティエリアの使役する精霊は、全てロックオンの使役する精霊でもある。ティエリアは、ロックオンの力を分け与えられ、本来なら召還することもできない上位精霊を召還することができた。

「さて、どこまでもちこたえれる?バカなヴァンパイア」
ロックオンは、凍りついていくティエリアの心配をしない。この程度でティエリアが死ぬことはないと分かっているのだ。マスターが傷つけた傷では、血族は死なない。だから、少々乱暴な戦法にもでる。
「ぐおっ」
ヴァンパイアが凍てつく温度に耐えられず、ティエリアの中から出ていった。右肺が、宿った核であった。そこをアイスランスで貫かれ、氷の業火で焼かれてひとたまりもない。
「生命の精霊リーブよ、ティエリアを癒せ」
ロックオンが生命の精霊を召還する。小さな小人の精霊は、凍りついたティエリアに生命の祝福を与える。
凍ったティエリアは溶け、傷も癒えていく。
普通にマスターであるロックオンの血を与えることでも傷は癒えるが、戦闘中は精霊に頼ることが多い。

一般的に治癒とヴァンパイアは相容れない存在と考えられがちだが、ヴァンパイアは長寿を誇る一種の種族だ。回復魔法も通じる。ただ属性が闇であるだけに、神聖魔法の回復魔法はダメージになるが。

ティエリアはビームサーベルを手にとる。
「ロックオン」
「はいよ!」
ロックオンは血の本流となり、ビームサーベルを覆う。
そのビームサーベルで、ティエリアは逃げようとするヴァンパイアを切り裂いた。
ヴァンパイアはすぐに灰となった。

水銀のヴァンパイアとして有名なロックオンの血には、水銀が混じっている。ヴァンパイアに最もきく銀の成分を含んでいるため、ロックオンが血となって纏いついたビームサーベルで切られたヴァンパイアは、もがき苦しむ暇もなく灰となっていくのだ。

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